「パンパンプキン パンプキン♪」
猫魔女ブレアが放った魔法。
まさかこんな騒動を引き起こすとはこの時、さしもの死神様も想像してはいなかった。





パン☆ぷりん☆パニック その1





――― 処刑台屋敷 AM 6:00 ―――

「うむ。今日もきっちりかっちり6時起床。」
キングサイズのベッドからむくりと起き上がり、死神様の息子…デス・ザ・キッドはシルク製の掛け布団を跳ね上げた。
そして綺麗に左右対称にベッドを整えた後、スリッパを履いて食卓に向かった。
若干、パジャマの裾やら袖やらが伸びた気がしたが、シンメトリーではあったので特に気には留めなかった。

きっちりかっちり朝食の準備をし、3人分の食器をきっちりかっちり左右対称に並べる。
「うむ。我ながら見事なシンメトリー」
キッドはうっとりしながらもうじき起きてくるであろう姉妹を待った。

「おはようキッド」
「おはよぅ〜キッドくん」
「遅いぞリズ、パティ。朝食にしよう。」
いそいそとナプキンを首に巻くキッドを、姉妹が真剣に見つめる。
「ぉい…キッド…」
「ん?どうした?食べないのか?」
「いや…そうじゃなく…なぁ?パティ…」
「キッドくん、女の子になってるよぉ?」
「…は?」
長い食卓の中心にキッド。
食卓の角を挟んでその左右にリズとパティ。
二人の視線が中央のキッドに注がれる。
それはそれでシンメトリーとなりキッドはうっとりするのだが。
パティの言葉に引っかかった。
「何を莫迦な事を。」
ふん、と鼻を鳴らし、キッドはナイフとフォークを手に取った。
このシンメトリーでない食器を使うのは好きではないが、ここは慣れというものだろうか。
そういえば、椿の国の文化である『箸』という食器は見事なシンメトリーで大層美しかった…と
キッドは若干現実逃避気味に思いを馳せた。
「いやいや、キッド。現実をしっかりと見ろ。」
「キッドくん、はい、かがみー」
リズとパティが鏡を持ってキッドに向ける。
鏡の中に映ったのは、もちろんキッド。
漆黒の艶やかな髪、その左半分には好きではないが父である死神曰く"チャームポイント"の白い三本線。
しかし、髪の毛の全体の長さが伸びている。
リズと変わらないくらいはあろうか。
もともと長めの睫毛もさらに伸びている気がする。
そういえば、幾分手足のリーチが短くなった気がしていたが…。
「…嘘だ…」
ぽつり、と呟くキッドの胸を、パティが遠慮なく掴む。
「ふぎゃっ」
「おっぱいもちゃんとあるよぉ?」
「あ、本当だ。マカよりおっきいな。」
左右から、姉妹に遠慮なく揉まれキッドは真っ赤になって口を開閉する。
「なっ…お前ら……っ…」
「んー、お姉ちゃんよりは小さいかなぁ?」
「まぁ椿やパティには及ばない感じだなぁ。」
「んっ……や……」
揉まれ続ける胸からむず痒さが伝わってくる。
頬を染め必死で姉妹の手を静止しようとするキッドの姿に逆に姉妹が赤面してしまう。
(やっべ…キッド色気ありすぎ…)
(うわぁ、キッドくんのこんな姿、マカやソウルには見せられないなー)
キッドの胸から手を放し、コホンと軽く咳払いをしたリズ。
「ところで、どうしてキッドが女になってるんだ?」
「……っそれは、オレが聞きたい。」
涙目になっているキッドの頭を撫でながらパティが続ける。
「でもさ、キッド君は男でも女でもかわいいよ?だから大丈夫。」
「何が大丈夫なんだ…。こんな姿…父上に見せられない。…鬱だ…死のう…」
がくりと頭垂れるキッドに追い討ちを掛けるように、食卓に能天気な声がひびいた。
「うっす!ちゃーっす!!キッドくん今日も相変わらずキュート(ハート)だねぇ」
「ち…父上…!」
「「死神様!!」」
先ほどの鏡から死神が顔を覗かせていた。
「いやねぇ〜なぁんか厭な波動を感じちゃったからさー。
心配で来てみたんだけどぉ、ちょぉーっと遅かったみたいだねぇ」
それにしても、もともと可愛かったけどさらに可愛くなったねぇ〜等とのんびり言う死神。
「ちちうえぇ…」
涙目のキッドの頭を撫でつつ、パティは笑いながら「泣き虫キッドくん〜」と楽しそうだ。
「まぁさ、キッドが女の子になっちゃった原因はシュタイン君にも調べてもらうからさ。
暫くそのままで学校通いなさいね〜」
「えっ…?!」
キッドの蜜色の瞳が大きく見開かれるが、死神は気にせず続けた。
「大丈夫、だいじょーぶ。ちょっとの間だけだから。
じゃあリズにパティ、キッドの事よろしく頼むねー。
あ、キッドのお洋服はもう届けておいたから☆じゃにー、ばっはは〜い」
一方的に言いたいことだけを言い、死神との通信が切れた。

残されたのは、泣き崩れるキッドとその武器、トンプソン姉妹。
「うっ…うっ…ぐすっ…ぐすっ…うえぇっ…」
「まー、とりあえず…さ。学校行こう?キッド。」
リズに背中をぽんぽんと叩かれて、涙に濡れる顔を上げた。
「学校…」
「学校好きだろ?」
「…うん…いく…」
素直に頷くキッドをパティとリズ二人で寝室へ連れて行く。
死神が用意したという服を着せて登校しなければ。
今日も遅刻だな…ふとリズの頭をよぎった。





美少女の転校生がやってきた
という噂が死武専に広まった。
実はそれがキッドなのであるが。

トンプソン姉妹に伴われて登校したキッドは、ためらいがちに教室に入った。
死神がチョイスした服装というのは、まさしくキッドのかわいらしさを強調するような、愛らしいものだった。
シンメトリーを愛する彼のためだろうか、ヘアピンも左右にひとつずつ、
黒いタイトなブレザーの下には白いドレスシャツ。
長めの袖からブラウスのレースが覗き、その袖口には彼が愛して止まないシンメトリーのカフス。
黒い丈の短いフレアースカートの裾からもひらひらと白いレースが覗いている。
オーバーニーソックスはガーターベルトで留められ、真紅の厚底靴はキッドの華奢な身体を強調していた。
もじもじと内股気味で姉妹の後ろに立っているキッドを見つけ、
身を乗り出して最初に食いついたのはもちろん、マカ。
「そのかわいい子誰ー?!」
やや興奮気味なのは、気のせいではないらしい。
興味なさ気に目を閉じて頭の後ろで手を組んでいたソウルは、会話だけ耳に入れている感じだ。
ブラック☆スターと椿の姿はまだない。
「キッドくんだよ」
パティがこともなげに告げる。
「えぇー?!キッドー?!」
マカの驚きの声に教室中の視線がその美少女…もといキッドに集まる。
「なんか朝起きたらキッド、女になっちゃっててさー」
リズが頭を掻きながらキッドを促して席に向かう。
ほら、キッド。と言われて空いていたソウルの隣に腰掛けた。
座った時、ふわりと空気が舞い、ソウルの鼻に甘やかな香りが届く。
そこで漸くソウルが目を開けた。
キッドが女になったところで何が変わる訳でもない、そう思っていたのだが。
視界の端に入るキッドの姿に胸が高鳴った。
じーっと見入るソウルに気づき、キッドがうつむいていた顔を上げた。
「…ソウル?」
不安げに見上げてくる蜜色の瞳。
いつもより潤んでみえるのはきっとキッドの気持ちが凹んでいるからだろう。
はらりと肩口から流れるさらさらの黒髪はいつも以上にキッドを艶やかに見せた。
おぼろげながらキッドに恋心を抱いていたソウルにしてみれば、
まさに理想が服を着て隣に座っている状態。
「かわいぃ…」
無意識に呟いた言葉に、キッドが明らかにムッとした。
「ソウル…莫迦にしてるのか…っ?」
泣きそうな瞳をさらに潤ませ、きっと睨み上げてくるが、もともとかわいらしいキッド。
ちっとも恐くはない。
しかも、女の子となっている今、別の意味での威力が高い。
キッドの後ろでは、マカがキッドの長い髪の毛を指で梳いていた。
「わぁ!さらさら!!」
「キッド。そろそろ元気だせよ。今シュタイン先生も調べてくれてるんだろ?」
「キッドくん、元気出せー」
いつも鬱陶しいくらい落ち込むキッドではあるが、今回は流石に同情してしまうトンプソン姉妹。
そんな事はお構いなしにマカがキッドに擦り寄る。
「ねぇねぇキッド!今日うちに泊まりにおいでよっ!パジャマパーティーしよー☆」
はしゃいで見えるのは気のせいではない。
キッドの事を気に入っているマカ。
死神様の息子、ということは重々承知ではあったが、マカはキッドが好きだった。
友達以上、恋人未満。まさにその境界線程度のものだけど。
好きという気持ちに偽りはない。
今、目の前のキッドは女の子。
泊まりに誘う口実にもなるし、なによりこの人形のような可愛さをもっと愛でたい…という気分だった。
「そんな気分では…」
「いいじゃんキッド。泊まってきなって〜。」
少しでもキッドの気分転換になるのなら、とリズはマカの誘いを勧めた。
「うむ…じゃあ…そうするか。」
何時までも凹んでいても仕方ない、と考えを改めたのか、キッドは幾分明るく頷いた。
この、花が綻ぶような笑顔を見たマカ、ソウル、リズ、パティ。
しばらく変な動悸が治まらなかったとか。



「転校生ー!!勝負だー!!!!」
そこに登場したのがブラック☆スター。
転校生がやってきた、との噂を聞きつけ派手に登場したのだが。
「あ、ブラック☆スター、転校生じゃないんだよ、キッドなんだよー」
マカが珍しく興奮した様子で背後からキッドの両手を取って万歳させる。
「ちょっと…マカ…」
されるがままになっていたが、さらに教室中の視線を集めることになってしまったこの状況に困っているのだろう。
頬を染めて背後のマカを見やる。
その可愛さといったらソウルの心を打つのに充分だった。
「そんな事はどうでもいいー!オレ様より目立つのが気に入らないっ!!勝負だ転校生ー!!」
やっぱり転校生と思い込んでいるブラック☆スターをたしなめる椿。
「ごめんなさい、キッドくん。」
「おぅ表に出ろ転校生ー!」
周りの言葉も椿の静止もまったく意に介せず
ひゃっはー☆と叫び声を残しブラック☆スターは教室の窓から飛び出してしまった。
後に残されたキッドはちょっとだけ黙った後、
「オレは、行った方がいいん…だよな?」
とソウルに問いかけた。
「…ん?…あぁ…」
キッドの可愛さにノックダウン寸前のソウルは何も考えずに頷いていた。



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あっという間にやっちまったキッド女体化ネタ。
女装も女体もばっちこーい☆なので、楽しんでおります。
いきなり続いているんです。女体化ネタで。
とりあえずキッドアイドル。
当サイトでは娘さんもキッド大好きっこです。