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「お前にわかるか? 神の命の長さが。それが、何を意味するのか。」 その頭上に光の輪を乗せた少年は、 目尻を紅く染め上げながら、それでもキツく目の前に立つ銀髪の少年を睨みつけ、 苦々しくそう告げて背を向けた。 雲路の果て 1 ツカツカと肩をいからせながら廊下を歩く。 漆黒のスーツ、胸元には死神を模したブローチ。 夕日を受ける死武専の建物に残っている生徒もそぞろで、今自分がどんな状態でいるのか、 など気にせずそのまま歩みを進めた。 デス・ザ・キッド。死神様の息子。 神であるにも関わらず、ふとした切欠から死武専に編入し、自ら武器を育てている 少し変わった次代の死神様。 キッドは、学友であるソウルに呼び出されて きっちりかっちり指定された時刻に指定された空き教室に赴いた。 話がある、としか聞いていなかったし、その時はまだ何を言われるのかなど想像もしていなかったのだが。 空き教室には既にソウルがいた。 教室の窓からは茜に染まった夕日。 その夕日を受けて何時もは白っぽくみえる銀髪も、赤く燃えるように見えた。 昔父である死神に読んでもらった絵本に出てくる火の精霊のようだと思った。 「話とはなんだ?ソウル。」 ソウルの姿を確認すると教室に足を踏み入れ、近づきながら声をかけた。 少し背を丸めて俯き気味に窓の外を見つめていたソウルは、キッドの声にゆっくり振り返る。 「あ、わりぃ。いきなり呼び出したりして。」 「いや、構わない。教室では話づらいことだったんだろ?」 なんだかんだと明け透けな感のあるソウルだが、本当に胸の内を吐露した事がないのではないか、と キッドは感じていた。 それは、命を預けて共に戦っている職人・マカに対しても。 職人・武器のスタンスはいろいろある。ブラック☆スターや椿のように今や隠し事も秘密もない関係もあるし、 マカやソウルのように大切な事は話合わない関係もある。 ふとそんな事を考えながら、真剣な表情のソウルを見やって、先を促した。 「…で、話とは?」 ソウルの雰囲気から話の内容が重要なものである事が分かる。 その話を、マカでなく自分にしてくれることに、なんだかキッドは嬉しさを感じていた。 今まで立場的に人から受ける扱いは"死神様の息子"だった。 どこにいても何をしても。自らの肩には"死神の息子""次期死神"の肩書きがついて回る。 そんなキッドを、ただのキッドとして扱ってくれる仲間が出来たのは、死武専に入ってからだ。 それがとても嬉しく、それと同時にキッドは怖くもなる。 ようやく"キッド"という個人を認識してくれた仲間。ソレを失うのが、怖い。 どうしても神と人の生きる時間は違うから、一人遺される事に耐えられないかもしれない。 ふと、キッドは自分の考えに沈んでいた事に気づき、慌ててソウルの様子を窺う。 どうやら、ソウルは言いあぐねているようで、首の裏を掻くように撫でながら何度か口を開こうとして躊躇っているようだった。 目をぎゅっと閉じて眉根を寄せたり、 ゆっくりと瞳を開いた後、唇をかみ締め、何か言葉に出そうと口を開くが躊躇ったようにすぐに閉じたり。 そんな様子をどこか好ましく思い、キッドは考えに耽っている間に話が進んでいなくて良かった、と 安堵すると共に、目の前のソウルに自然と表情が緩む。 「一人で、何を百面相してるんだ。」 「あ、わり…って、笑うなよ、キッド。」 くすくすと忍び笑いをしていたのを咎められ、キッドはソウルの緊張が解れるよう、軽く謝った。 「すまない。どうやらとても言い出しにくいことらしいな。」 「まぁ…その…そうかも、な。」 歯切れの悪い返事にも普段なら"ハッキリしないか!"と声を荒げていたかもしれない。 だが今日はそんな気分にはなれず、キッドはなるべくソウルが話を切り出しやすい環境を作ろうと、 柔らかな表情、口調を心がけて声を掛けた。 「ゆっくりで良い。」 傍らのイスを引いて座ろうとしたところで、その腕をソウルに掴まれた。 「キッド、好きだ。」 「……………あ…、あぁ…。ありがとう…。オレもソウルが好きだ。」 ソウルの言葉に一瞬止まり、どのように反応して良いか分からないまでも、 何とか不自然に長い妙な間を空けずに済んだ…と思いたい。 かろうじて搾り出した声で、少し検討違いな返事をしてしまっただろうか、とキッドは考えるが、 目の前のソウルが腕を掴む強さは変わらず、その表情はさらに真剣さを増していた。 「まぁ予想通りの返事だけど、さ。誤魔化さないでくれ。」 「どいう…」 意味だ、と続けようとしてソウルの表情に気圧される。 「キッドが好きなんだよ。友達としてなんかじゃなく、もっとずっと。」 夕日を背に受けるソウルの瞳はいつも以上に紅く見える。 少し高い位置から見つめられ、キッドは我知らず心拍数が上がってゆくのを感じた。 嬉しい、と思いながらも募る不安と恐怖。 もしソウルの想いを受け入れてしまったら、どうなるのだろう。 ソウルの事は嫌いではない。むしろ好きだと思う。 キッド自身、いつもトンプソン姉妹と居ながら、それでもソウルと一緒にいるマカがうらやましかった。 何時からだったろう。同じ仲間の内でも、キッドの中でソウルだけは特別になっていった。 何に惹かれたのか、と聞かれてもすぐには答えられないけれど。 おそらくその魂の本質に惹かれた。 幼いとは言え死神だ。魂を見抜く力は、やはり人とは一線を隔す。 まばたきもせず、目の前のソウルの目を見つめた。 真剣なソウルの瞳。紅いその瞳の中に、自分の姿が見える。 ソウルの想いを受け入れる、それはとても甘美な誘惑だ。 ソウルがキッドを好きだと言っている。友達以上想っている、と。 そしてキッドはソウルのその想いを受け入れたい、と思う。 けれど… ソウルの想いを受けいれてしまったら、きっと自分は弱くなってしまう。 子供同士の今はまだ良い。 今だけを考えるなら、ソウルの手を取りたい。 しかしそんな刹那的な行動は神であるキッドにとって何の意味も成さないから。 悠久の時を生きるのだ。 父である死神だって、マカの父・スピリットで一体いくつめのデスサイズか知れない。 神と人の生きる時間とはそれほどにかけ離れているから…。 死神になったら、ソウルを手放せるだろうか? 彼を地方へ派遣することが出来るのか? その身を死神に捧げ、人々の平和のために命を差し出せ、と命令することができるのだろうか。 寿命にせよ、戦闘で命を落とすにせよ、 ソウルが先に逝ってしまう事に耐えられるだろうか? もしもこの手を取らなければ。 ソウルの申し出を受け入れなければ。多分、やっていけるだろう。 けれど性分として一度手に入れてしまったものは手放したくない。 だから、キッドはこのソウルの手を取るわけにはいかないのだ。 全ての事象を考え出したらキリなどないが、 死神であるキッドは亡くすことを前提に考えなければならないから。 刹那の悦びに身を任せるには、あまりにも自らに課せられている使命は大きい。 「ソウル…気持ちは嬉しいが…オレは…それを受けるわけにはいかないんだ。」 「どうしてっ!」 キッドの言葉に、腕を掴むソウルの手に力が篭る。 瞬間的に痛みに顔をしかめるが、キッドは痛がってはいけない、と自らを叱咤した。 本当に痛いのはソウルの方。それが分かっていたから。 「ソウル、オレには耐えられないんだ。 一度手に入れたものがこの指の間から零れ落ちていくのが。」 「どういう意味だよ…それ。」 「…お前にわかるか?神の命の長さが。それが、何を意味するのか。」 ソウルの瞳、ソウルの表情、ソウルの言葉。 全てがキッドを誘惑し、惑わせる。 おそらく、今の自分の顔は赤くなっている。 何故だか悲しくて、もしかしたらうっすらと涙目になっているかもしれない。 けれどここで泣くわけにはいかない。目にきゅっと力を込めて、キッドはソウルを見上げる。 ソウルの、顔。 キッドは居ても立っても居られずに、少々乱暴にいまだ掴まれたままの手を振り払った。 そして背を向け、教室を出る。 ソウルの色をなくした表情が脳裏に焼きついて離れない。 next |
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同名のCo/c/coの曲より。 死神様って一体どれだけ生きるんでしょうかねー、という疑問とともに。 なんのかんのと今を生活しているキッドですが、 きっとその両肩に乗っかっているモノについても 考えているんだろうなー…なんて。 『オレはまだ子供だけど死神』的な自覚が好きだったりします。 けど、あっさり『シンメトリーは攻撃できない』とか自分の主義押し通して 死も覚悟してしまうのは、まだパパンが存命で現役だからだと思ってみたり。 |