純真無垢も困りもの


「あ、これパパとママの写真…」

何かの話で、マカが持っている本にキッドが興味を示した。
読んでみたいというキッドに、マカは快く本を貸し出すことにした。
マカのアパートに二人連れ立って戻り、リビングで待っているキッドにマカは本を差し出した。
その時。ヒラリと落ちた1枚の写真。

おなかの大きな綺麗な女性と、スピリットが写っている。
どちらも幸せそうな笑顔だ。

「マカが産まれる前か?」
「うん。でも結構ママのおなか大きいし、臨月近いと思うなぁ。」

写真を見てふわりと笑うマカに、キッドもつられて笑顔になる。

「そういえば、昔はあかちゃんって、
キャベツ畑のキャベツから生まれる、とかコウノトリが運んでくる、とか。
いろいろ信じていたけど…。何も知らない方が幸せな事もあるんだよね…」

写真に写るスピリットを見つめ、今度は皮肉な笑みを浮かべたマカ。
おそらく、スピリットの女癖の悪さを思っているのだろう。
苦笑しながら、キッドは写真をマカに返した。

「アタシも、何時かは子供が欲しいなぁ…」

写真を受け取りながら、マカは意味あり気な視線を含んでキッドを見つめた。
今は都合良く、恋敵であるソウルもいない。
ここは少し押してみようか、とマカは思った。
どうせ、鈍いキッドには伝わらないだろう…と分かっていながらも、少しは期待してしまう。
すると、キッドはにっこりと笑ってマカに告げた。

「結婚したら、産まれるんじゃないのか?十月十日したら。」
「………ん?」

笑顔のまま固まったマカに、キッドは笑顔で続けた。

「生命とは不思議なものだな!
結婚したら10ヶ月と10日できっちりかっちり産まれてくるとは…。素晴しい!」

キラキラと語るキッドに、マカは軽く目を瞑ってこめかみ辺りに指を当てた。

「キッドくん…"子作り"って言葉、知ってるかなぁ?」
「"子作り"?…子供は、結婚したら生まれるものだろう?」

マカは思った。
純真無垢なのも、程があるだろう、と。
博識なキッドではあるが、性の知識についてはトンと疎い。
こんなアンバランスな状態で、ソウルの手に落ちたりしたら大変だ。
マカはキッドに手渡した本をそっと受け取り、テーブルに置いた。
その後、優しくキッドの手を取り、軽く引っ張ってソファから立たせた。

「とりあえず、アタシがいろいろ教えてあげるね♪」
「…何を?」

若干困惑気味のキッドに、マカは優しく微笑むと、そのまま自室へと引っ張った。
この後、キッドが正しい性知識を学んだかどうかは、マカとキッド二人しか知らない。