夫婦の禁止事項


キッドに送り出される日常にも慣れ、手渡された弁当も綺麗に平らげて二人の愛の巣へと戻ったソウル。
玄関を開けると、そこには赤い染みが点々と落ちていた。
玄関マットに染み付くその赤い色。
その色にソウルは嫌な感じを受けた。
赤く続くその染みはキッチンへと続き、だんだんと量も多くなっていく。

背筋がぞっとした。
ソウルは急いで靴を脱ぎ、キッチンへと入った。
「キッド!」
叫びながら見渡せば、床に倒れるキッドの姿が。
「おい…!キッド!!どうした?!」
「…ソウル…」
手にもべったりと赤い液体をつけたキッド。
声が弱々しい。
そんな姿のキッドにソウルはぐっと胃からせり上がってくる何かを耐えた。
「どこか痛むか?怪我してるのか…?!」
自分自身、相当動揺しているのが分かる。
が、こんな状態のキッドを見て冷静でいられる訳がない。
もし魔女が襲ってきたのだとしたら?
早く病院へ連れて行かなければ…出血量はどのくらい?
キッドの意識は…などなど考えていると、キッドがポツリと呟いた。

「…俺は…ゴミ溜め的存在だ…」
「…は?」
「ダメ神だから、上手く絞れないんだ…」

深い金色の瞳に、ゆるりと水分がたまってゆく。

「えっと…?大丈夫なのか、キッド…?」
「ぐすっ…っじゃない…。シンメトリーにならない…」

幼いその口調は、まさに鬱真っ最中のテンションで。
床に倒れていたキッドに気を取られて気づかなかったが、
彼の周りには山ほどのオムライスとケチャップの空き瓶、さらには卵の殻が。

「もしかして…キッド…」
「ひっく…オムライスに…ハートが…かけない。
どうしても左が大きく…っうぅっ…」

ソウルは、ほっとしたのと同時に脱力した。
「…勘弁してくれ…マジで、心臓が止まるかと思った…。」
その場にへたり込むソウルに、今度はキッドが心配する。
「どうしたソウル…?具合でも悪いのか?」
「とりあえず、オムライス作るの禁止。」
「…なぜ?」
「俺の寿命を縮めたくないだろ?」
「うむ。」
「じゃあ、もうオムライス作るのは禁止だ。
どうしても食べたくなったら、外に食いに行こう。」

ソウルは抱き上げたキッドを抱きしめて、深呼吸した。
その体から香る美味しそうなオムライスの匂いは、ソウルの好物の一つでもあるが、
こんな思いをするくらいなら、もう二度と食べなくても良い、そう思った。

その日は、いつものメンバーに声を掛け、二人の家でオムライスパーティーが開かれた。
ソウルの胸中は複雑だったという。