死神姫・3


「君が死神姫かぁ。」
「……誰だ?」

城の中の広大な庭で、薔薇の手入れをしていた死神姫に、シュタインは声を掛けました。
艶やかな黒髪は肩甲骨の辺りで綺麗に切りそろえられ、
薔薇のような頬、紅を引いたような唇、磨き上げられた美貌は完璧で、蜜色の瞳はピタリとシュタインを捕らえます。

「確かに、噂どおり…いやそれ以上かな?」

タバコに火をつけて一服すると、シュタインは意味ありげに、ニタリと死神姫に笑いかけました。

「解剖しても良いですか?」

死神姫は柳眉を顰めました。

「知ってるぞ。お前、変質者だろう。」
「あたり〜」

死神姫の言葉に狼狽することもなく、シュタインは答えました。
シュタインがゆらりと動けば、死神姫は勇敢にも、薔薇の手入れ用に持っていた鋏を構えます。

「死神姫、殺すにはあまりにも惜しい…。だから、逃がしてあげる。」
「…逃がす?」

シュタインの様子に、彼が指をのばすのを赦し、死神姫は好きに触れさせました。
人差し指の背で頬をなぞるように、顎から耳へ指を移動されるとほんの少しだけ身じろぎます。

「この城、魔女に乗っ取られちゃったんですよ。
で、その魔女があなたを殺そうとしている。」
「…信用できるのか?」
「僕が、君を殺しに来た魔女の回し者だとしても?」

じっと、深い色の瞳がシュタインの瞳を捉え、真偽を疑っているようです。
吸い込まれそうな色合いに、もっと触れていたくなりますが、そこはぐっと我慢です。

「ほら、そこの小路を抜けて。城から出られるから。」
「…リズやパティは…?」
「命を狙われてるのは君。」

シュタインの言葉を信じたのか、死神姫はコクリと頷くと、すみれ色のドレスを翻してシュタインの指差す小道へでました。