死神姫・1


むかしむかしあるところに、死神様がいました。
死神様が刺繍をしていると、針が指にささってしまいました。
ぷつりとあふれる血の色は深紅で、その時死神様は思いました。

「あ〜、子供欲しいなぁ。
この雪景色みたいに真っ白な肌に、この血のように綺麗な深紅の唇をした、薔薇色の頬をした子が良いなぁ。
きっと僕みたいに美形にそだつよん」
「なにリリカルな事言っんですか、死神さま!
刺繍なんかいいですから、早くこの書類に決裁の判を下さいよー!」

部下のスピリットの嘆きを前に、死神様は笑顔のままその血の溢れた指を書類に押し付けた。

「えいっ♪」
「ぎゃー!何血判押してんですか!!おどろおどろしくなるでしょうがー!」

唯でさえ、悪人の魂リストなのに!と叫ぶスピリットを尻目に死神さまは始終笑顔でした。

そして程なく、死神様に子供が授かりました。
生まれてきた子は死神さまのご希望通り、
真っ白い新雪を思わせる白さを誇る肌に、薔薇色の頬、紅を引いたかのような、ふっくらとした唇を持ち、
さらに蜂蜜色の蕩けそうな瞳をした、それはそれは、かわいいかわいいお姫様(?)でした。
姫は『死神姫(又の名をキッド)』と名づけられました。

「おい…俺は姫ではな…むぐっ」
「ちょっと黙ってようねキッドくん♪」

姫の、玲瓏珠のごとき美声を遮ったのは、彼女の側用人、パティでした。

「おいキッド、お前今回は"オシトヤカ"な"オヒメサマ"なんだから、そこんとこ忘れんなよ」

面白そうに笑うのは、同じく側用人のリズ。
二人に理不尽だ、と瞳で訴えかける死神姫の美しさは、例えようがありません。