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桜 「まだ、花見には早いな。」 夜の公園で、キッドは一人三分咲きの桜を見上げた。 近々いつものメンバーで花見を企画している。 やるからにはベストな場所と、ベストな時期を選びたい。 企画立案はマカだったが、時期と場所はキッドが選ぶことになった。 毎日、天気を調べたり桜の開花情報を聞いてはいたが、 やはり自分の目で見るのが一番だろう、と思い ここしばらくこっそりと夜の公園に来ては桜を眺めていた。 それに今は一人で考えたいこともあった。 家では姉妹が居て実はゆっくり考え事ができない。 ゆっくりとベルゼブブを滑らせながら、公園の遊歩道をめぐる。 遊歩道に等間隔で植えられた桜を見ながら、頭に浮かぶのはつかみどころのない人物。 気づいたら側に居て、気づいたら気になる存在になっていた。 お互い特に接点があるわけではなかったはずなのに。 考えだせばおかしなものだと思った。 なんで気になるのか、と問われても困るが、気になるのだから仕方ない。 例えば、今どうしているのか、とか。 まるで女の子のようだと苦笑しながら、見上げていた視線を戻せば前方から人影が近づいてくる。 「よぉ、なにしてんだこんな時間に?」 「…ソウル…」 今の今まで気にしていた人物が目の前に現れ、キッドは少し動揺した。 「お前こそどうしたこんな時間に?」 質問を質問で返せば、ソウルが笑った。 「俺は散歩。」 「そうか。」 そこで会話は途切れてしまったが、なんとなく離れがたくてキッドはそのまま立ち止まっていた。 暫くすると、ソウルが声を掛けてきた。 「そんな格好で、寒くねぇの?」 言われて気づく。まだまだ花冷えの時期だ。それにしては随分薄着で出てきてしまった、と。 「…確かに、寒いかもな。」 気づかなかった、と続ければ両肩にふわりと感じる温もり。 「着てろよ。」 見ればそれはソウルが今まで着ていたジャケットだった。 「お前は良いのか?」 「風邪ひかせらんねーだろ。」 「何故?」 「…惚れてるから?」 笑いながらソウルの手がキッドの髪を梳く。 「気障だな。」 その言葉に、行動に心拍数が上がるのに。 それをごまかすためにキッドは桜を見上げた。 「まだ、咲かねーなぁ」 キッドの行動を追従し、ソウルも桜を見上げて呟いた。 それにキッドは胸中で答える。 (この桜が満開になるころには…伝えるから…) 「想いを、伝える…。」 「なんか言ったか?」 「なんでもない。」 桜が咲くまであと少し。 キッドがソウルへ思いを告げるのも、あと少し。 |