意趣返し


「今日は…よせっ…」
「"今日は"って昨日もそう言っただろ、おまえ。」
「言ってもやめないのはおまえだろう、ソウル!」

ベッドの上でギリギリと力比べ状態の二人。
きっちりかっちり12時には寝たいのに、ソウルはそれを赦してはくれない。
あと30分で12時になる。絶対、30分で済む訳が無いのだ、この男は。とキッドは胸中毒吐く。

スピードや武術だけなら断然勝るのに、力比べとなるとほぼ互角。かれこれ2、3分、力が拮抗している。
こうなると持久戦で体力勝負だ。体力だったらキッドに分がある。
けれど、そうそう上手く行かないのが世の中で。

「…なんか…額縁ずれてねぇ?」
「なにっ?!」

ソウルの一言に、キッドが反応し、背後の額縁に視線を向ける。

「なーんてな♪」
「…っ!!」

毎度毎度、なぜ同じ手に引っかかってしまうのか、キッドは悔しそうに下唇を噛む。
視界には、見慣れた天井とソウルの銀髪、欲を湛えた瞳。
力に任せてやや乱暴に押し倒された体は、それでもベッドが衝撃を吸収して痛みはない。

「諦めろよ、今日も。」
「くっ…卑怯な…」

そして、いつものように行われる行為。
(毎度毎度、嘘を吐きおって…絶対…後悔させてやるからなっソウル!)
体を這い回るソウルの手の感触に身を震わせながら、キッドは心ひそかに誓った。



明けて翌日。

「今日は健康診断でーす。身長・体重量ってレントゲン撮るから、男子はさっさとパンツ一丁になってね。女子は保健室へ移動〜。」

明るく告げるシュタイン。
その言葉にキッドはこっそり、ニヤリと笑んだ。
昨日、卑怯にも嘘を吐いた(…実際は毎日同じ嘘を吐いているのだが)
ソウルに天誅を食らわせるため、昨夜こっそり仕込んでおいたのだ。
もうじき、その仕込んだものが火を噴くのかと思うと、キッドは楽しくて仕方ない。

「ん?ソウル、お前背中にミミズ腫れできてるぞ。」

ブラック☆スターの言葉に、キッドは胸中諸手を上げて喜んだ。遂に天誅が下される日が来たのだ、と。

(さぁ、困れソウル!返事に困って慌てふためくが良い!!)

なんとも可愛らしい天誅だが、そんな事本人にはこれっぽっちも認識がない。
さらに、当事者であるソウルにはさらに自覚が足りなかった。

「ミミズ腫れ…?あー…昨夜のか。」
「昨夜何かあったのか?」

脱ぎながら問うブラック☆スターに、ソウルは事も無げに告げた。

「キッドだろ。昨日はやけにしがみついてくるなって思ってたけど…ミミズ腫れになってんのかー」
「へぇ…キッドがねぇ。」

そんなにヨかった?と、二人から視線を受けて固まるキッド。

「…なぜ…そうなる…」

そう。それはもう、いろいろと計算外で。
本来なら、目の前ではソウルが赤面して恥ずかしがってるはずなのに。
それがどうだ、ブラック☆スターと一緒になってニヤニヤと笑っている。

「背中に爪立てるほど、良かったんだろ?」
「ここまで行動で示されちゃ、男としてはまた今夜頑張るしかねーな。」

ワケガワカラナイ。

キッドは開いた口が塞がらなかった。
二人の口からこうもボロボロと、聞きたくも無い言葉が出てくるのは何故だ。
というか。

「貴様らには…恥じらいというものはないのか…」

がっくりとうなだれるキッド。
意趣返しはさらにキッドへ、見事に返されてしまったのだった。