溶けてしまいそう


外はとても暑くて、路面には陽炎が立ち上る。
暑さに耐え切れずエアコンをつけたは良いけれど、流れる汗は暫く止まらない。
こういう日は涼しくした室内で過ごすのに限る。
どうせマカは女性陣とプールに出かけてて留守なんだ。
気兼ねすることなく、リビングで寛げる。
そう思って、ソウルは一人、ソファにだらりと横になる。

5分か10分か、肌寒さにふと気づき、ソファで転寝していたことに気がついた。
下げすぎた温度設定を上げて、ソウルは手近にあった雑誌を手に取る。
数ページ、ぱらぱらとめくったところで、来客を知らせる玄関ベルがなった。

面倒臭い、正直そう思いながらも、玄関へと。
鳴り止まないベルに、相手が誰か、想像がついたからだ。
放って置いても、室外機が回っている状態で居留守を使える訳もなく。

「…よぉ。」

玄関を開けると案の定。
ブラック☆スターが立っていた。なんだかいたずらっ子のようにニヤニヤと笑っている。
ブラック☆スターの背後には、キッドまでも。
二人は手にたくさんの袋をぶら下げていて、外は大層暑かったろうに、汗一つかいていない。

「遊びに来てやったぜ、ソウル!」
「邪魔するぞ。」

勝手知ったるなんとやら。
二人はソウルが招き入れる前に玄関からリビング、キッチンへと移動する。

「っか〜!やっぱ涼しい部屋は良いな!」
「おい、ブラック☆スター、早くしないと溶けてしまうぞ。」
「おぉ。そうそう、お前も食うだろ、ソウル?」

急に話題を振られたが、"溶ける"のキーワードに、アイスクリームを思い浮かべた。
軽く頷くと、ブラック☆スターは持っていた袋から箱を取り出し、なんとも可愛らしいペンギン型のカキ氷機を取り出した。

「…かき氷かよ…」
「不服か?」

ソウルの呟きに、キッドが愉快そうに問いかける。
ペンギンの頭頂部分についたハンドルをぐるぐる回し、ブラック☆スターは楽しそうだ。
ソウルの回答を待たずに、今度はキッドが、持っていた袋から氷を取り出す。
大きなロックアイスをセットすると、ブラック☆スターが変な掛け声と共に、ハンドルを回し始めた。

「こら、ブラック☆スター、まだ器を入れてない」

ペンギンの腹の部分が空洞になっていて、そこに慌てて硝子の器をセットするキッド。
ガリガリと、音を立てながら白い雪山のようなカキ氷が作られていく。

部屋は冷えているが、視覚的にも涼を誘って、さらに夏らしさを感じた。

「ほら。」

キッドに差し出された器を受け取る。
雪山のようなカキ氷。
シロップが入った袋も手渡された。

「…シロップぬるい…」
「あー、外は暑かったからなぁ。」

ハンドルを回す手を止めずに、ブラック☆スターがのんびり答えた。
ソウルは袋の中のシロップを見る。
いちご、メロン、レモン、ブルーハワイ…などと書いてあるが、結局味は同じ、甘いだけのシロップ。
それなら、と、なんとなくレモンを選んだ。

氷にかけると、黄色く色づいた部分の山が少しずつ崩れていく。
黄色を選んだのは、キッドの瞳の色を想像したから。
白い雪山のようなカキ氷に、黄色のシロップ。

「お前はどうするんだ、ブラック☆スター?」

キッドの問いに、最後のカキ氷を作りながら、ブラック☆スターは「青」とだけ答えた。
キッドがブルーハワイのシロップを氷にかける。
ソウルの黄色の隣に青い山ができた。

「では、俺は、イチゴにしよう。」

悪戯っぽく笑うキッドの瞳が、シロップのように甘く感じられて。
青、黄色、赤と並んだカキ氷。

「信号みたいだな」

ブラック☆スターが満足そうに笑って、青い山にスプーンを差す。
ソウルも黄色の山にスプーンを差して、ひとすくい。
口に入れるか入れないか、のところで、隣に立つキッドがソウルにだけ聞こえる音量で呟いた。

「赤は、お前の瞳の色と、同じだな。」

見れば、その瞳は微笑っていて。
ソウルは口にスプーンを銜えたまま、小さな声で返した。

「黄色は、お前の色と同じだ。」

口の中の氷は溶けてしまった。
広がるのはシロップの甘い味。

同じコトを考えていたなんて、と、
黄色いカキ氷を食べながら、ソウルはなんともいえない気持ちになる。

(あぁ…本当に、溶けてしまいそう)