あめ玉


任務が終わって、死神様への報告を終えると、キッドはリズ・パティと共にデス・ルームを後にした。
斬首台の鎌をあしらった鳥居の下を抜けていくと、死神様から呼び止められた。

「そうそう、キッド君。」
「何、父上?」

振り向くと、背の高い父・死神様から大量の飴が降って来た。
反射的に両手で受け止めたが、2、3個取りこぼしてしまった。
取りこぼした分はパティが嬉しそうに拾っている。

「あめ玉だー♪」
「急にどうしたの、父上?」

訳が分からず問うキッドに、死神様は微笑んだ。

「最近、雨ばっかり降ってイヤになっちゃってさ〜。
だから、雨の代わりに飴を降らせてみちゃったり。
頑張ってるキッド君へ、僕からのご褒美だよ♪」

大きな手でキッドの頭を撫でる。
普段、父親らしいこと出来ないからさ。と続ける声は、何時になく優しい。
けれど、キッドにとってはこの時期の子供扱いがちょっとだけ…、気に障ってしまう。
アラクノフォビアだの、ノアだの、鬼神だの、と問題山積の中で、キッドは出来る限り尽力しているつもりだった。
それが、『ご褒美』と言われ、さらに頭を撫でられるというのは、ちょっと…癪だ。

「父上…、そんな事言って。俺はもう子供じゃないんだから、こんなことで誤魔化されないよ。」
「あらら、ご機嫌ナナメ?」

困ったなぁ、とさして困った風もなく、死神様は相変わらずキッドの頭を撫でた。

「大きくなったね、キッド君。」

身体だけでなく、精神も、魂も。
呟いて、死神様はキッドの手の中から一つ、飴玉を取り出すと、個包装を解いてキッドの口に放り込んだ。

子供の成長はあっという間だ。
死神、という職業柄キッドに構える時間が少なかった。
気がつけば、キッドはもう自分で考えて、自分で謎を紐解こうとしている。
それが嬉しくもあり、悲しくもあり。

ころころと、口の中で飴玉を転がしながらも、どこか拗ねた表情のキッドに、死神様は微笑んだ。

「愛しているからね。」
「…わかってるよ、父上。」