トリガー


指が、ゆっくりとセーフティを外す。
そのまま、ハンマーを引けば、きりきりとマガジンが回る。
そのマガジンの中には弾丸が一発だけ入っていた。
いわゆる、ロシアンルーレット状態だ。

キッドが今手にしている銃は、魂を打ち出す武器姉妹ではない。
鉛の弾が発射される、実弾の銃。
そのせいか、『銃器』そのものには慣れているはずのキッドでも、銃身がやけに重たく感じられる。

リアサイトは使わない。
射撃には自信がある。9割方、外すことはない。
もし外れてしまったとしても、それは一発しか込めていない弾と同様に、これはある種賭けのようなもの。

実弾が発射される確率は、約17%。
命中する確率は90%以上。
つまり、これから撃とうとしている人物の生存確率は、80%以上はあるわけだ。

いつも2丁持つ両手で、グリップを握りなおし、慎重に構えた。
ダブルアクション式のこの銃は、精密射撃には向かないが、たった一回トリガーを引くだけだ。
関係はない。
それに、キッドの腕ならば、シングルだろうがダブルだろうが、さしたる問題にはならなかった。

トリガーに指を掛ける。
いつもの、姉妹とは違う感覚に、キッドの精神はどこか高揚してゆく。

(…得られない愛ならば、その命を奪ってしまおう。
元来、神とは随分と傲慢で我儘な生き物なんだ。)

照星の先にいる人物は、まだキッドに気づいていない。
祈るような気持ちで、キッドはトリガーを引いた。

神である自分が誰に祈ったのか、
命を奪おうとしているのに、何故か相手の生存を願っている理不尽さも分からないまま。