純真無垢も困りもの2


「ねぇ父上、聞きたいことがあるんだけど。」
「なんだ〜いキッド君♪」
「大人のおもちゃって、なに?」

良く晴れた日の午後。
空調の効いた、快適なデスルーム。
本来は死神が腰掛けるはずの背の高い豪奢な椅子に、尊大に足を組み座る愛息子のキッドを見つめ、死神は暫し沈黙した。

「…ごめん。良く聞こえなかったみたい。
もう一回、言ってくれるかいキッドくん?」
「大人のおもちゃって、なに?って聞いたんだよ父上。
おもちゃに、大人用も子供用もあるの?」

組んだ膝の上に、腕までも重ね、わが息子ながらどこまでも優美に見える。
死神は軽く現実逃避を計りたかったが、そんな息子の姿に惚れ惚れし、そして逆に悪戯心が湧いてくるのを感じた。

「…どしてそんな事急に聞くの?」
「この間、街を歩いていたら見かけたんだ。
大人のおもちゃって看板をさ。どんなものか、興味があったから実際見てみたかったんだけど、店にすら入れてもらえなかった。」
「へぇ…どこのお店だい?」
「たしか…」

記憶を辿るように指先を顎下に当てた息子を愛でつつ、死神は後でその店潰しに行こう、と心ひそかに誓った。

「で、大人用のおもちゃってどんなものなの?
父上はそれで遊んだことある?」
「うーん…困ったなぁ…。キッド君、興味あるの?」

キッドの鋭い突っ込みに、死神はたどたどしく答える。
こんな事を聞かれるくらいなら、魔道具やエイボンについて聞いてくれた方が、なんぼかマシだ、と思ってしまう。

「興味…。そうなのかな。
俺ではまだそのおもちゃで遊べないって言うのが気になる。
対象年齢が18歳以上のおもちゃって、一体どんな素晴しいものなんだろうって。」

エクスカリバーの時と同じ、わくわくしたような気分になる、とキッドは続けた。
もっとも、エクスカリバーを見つけた後は相当ガッカリしたものだが。

「遊べない事もないんだけどねぇ…」
「本当かい父上?」

ウッカリ口を滑らせた死神に、キッドは椅子から身を乗り出して死神の仮面を見つめる。
その瞳はとても活き活きとしていて、"興味津々"と訴えてくる。

「…これも、教育の一環だよねぇ…」

ほんの一瞬だけ"しまった"と思ったが、すぐに死神は言い訳を見つけてキッドを抱き上げた。

「今何か言った、父上?」
「なーんにも言ってないよ♪じゃあ、キッドくんのために、大人のおもちゃで一緒に遊ぼうか☆」
「えっ?!良いの??子供の俺が遊んでも大丈夫?」

瞳をキラキラと輝かせて問うてくる息子に眩暈を覚えながら、死神は抱き上げたキッドの体をきゅっと抱きしめた。

「だ〜いじょうぶ!なにせ保護者が『いいよ』って言ってるんだから」

実際は、保護者が一緒に大人のおもちゃで遊ぶ、という事は非常に問題なのだが。
全てを超越してしまっている死神には世間一般のモラルなど通用しない。

「ありがとう父上!」
「んー、でもねキッド君、いっこだけ約束できるかな〜?」
「なんだい、父上」
「途中で、"やめて"とか"嫌だ"はダメだよ?
わたしだって、途中じゃやめてあげられないからね。」

死神の脅しを含んだ言葉に、キッドは一瞬息を呑んだ。

「…大人のおもちゃで遊ぶには、覚悟が必要なんだね?」

ちょっと見当違いだが、間違ってはいない、と判断して死神は頷いた。
正直、この愛くるしい存在が快楽に溺れて身悶える様を目の前にして、それ以上、踏みとどまる自信は皆無だった。

「分かったよ父上、俺は弱音は吐かない。」

きっ!と瞳に力を込めて死神を見つめるキッドを愛しく思いながら、死神はこれから始まる大人な遊びに思いを馳せた。

「んじゃ、まーゆっくり楽しもっか♪」

どこまでも明るい死神の声に、キッドはこれから始まる"大人のおもちゃを使った遊び"に胸が躍るのを感じた。

もちろん、キッドが想像していた"遊び"と随分かけ離れていたことは、言うまでもない。