死神姫・9


小人達を送り出した後、死神姫はお部屋のお掃除を始めました。
死神姫が右へ左へ移動するたび、すみれ色のドレスが翻ります。
そんな姿を遠めからそっと眺めるエルカ。

「こうなったらアタシの手で死神姫を殺すゲコ。」

魔女エルカは、真っ黒なフード付きのローブを纏い、小人達の家へと近づいて行きました。

「そこの綺麗なお嬢さん、櫛はいかが?」

戸口で死神姫に声を掛けます。
すると、忙しそうに作業していた死神姫が振り向きました。

「何か用か?」
「美しいお嬢さんの、美しい髪の毛を梳くのに、この上等な櫛はいかが?と思ってね。」
「…生憎だが、持ち合わせが無いのでな。」

死神姫は丁重に断りました。
それに、魔女が手にしている櫛は、どう見ても城で使っていたものよりも質が悪いようです。

「ゲコっ。それは残念…。それじゃ、特別キャンペーンという事で、この櫛はあげるゲコ」

あからさまに櫛を押し付けてくるエルカに、死神姫は困ってしまいました。

(人からの好意を無碍にも出来んし…。しかし、貰ったからと言って俺は使いたくないし…。)

胸中考え事をしていると、エルカは死神姫の背後へとゆっくり回って、その艶やかな黒髪に櫛を差し入れました。

「ほら、梳いてあげる。」

死神姫の綺麗な黒髪を滑る魔法の櫛は、死神姫自身に『死』という呪い掛けます。

…が。

「…ゲ…ゲコ…?なんともならない?」
「どうした、女?」
「えっと…死なない?」

このエルカの呟きに、死神姫がさっと顔色を変えました。

「お前!俺の命を狙っているという魔女か!」