死神姫・12


「まー、そんな訳でさ。キッドくんから手を引いてくれない?」

死神様はその大きな手でエルカの肩を叩きました。
どこまでも口調は穏やかで、いっそふざけているとしか思えないくらいに明るいですが、その実背後に背負っているものは真っ黒でした。
怯えながらエルカは答えました。

「い…いくら脅されたって、アタシだって命は惜しいし!
死神姫を殺さないと、アタシが殺されるんだから!!」
「うーん。困ったなぁ。
今この場でわたしに殺されるか、戻ってメデューサに殺されるかなら、今この場で死ぬ?」

にっこりと凶悪に笑うお面に、エルカは顔面蒼白になってしまいました。

「やめなよ父上。なんだか少し気の毒だ。」

リズとパティを侍らせて、キッドは父・死神の隣に立ちました。
そしてそのマントに擦り寄ります。

「そぉ?キッドくんがそう言うなら…」

しぶしぶ引き下がった死神様は、擦り寄った死神姫を軽々と抱き上げて、じゃあ帰ろっか?と問いかけます。

「待ってくれ父上。俺が世話になった小人達がまだ帰ってきてないんだ。
一宿一飯の恩義も返してないし、ちゃんとお礼がしたい。」
「じゃ、彼らが帰ってくるまで待たせてもらおうか。」
「部屋の片付けが済んだらアップルパイを焼くから。みんなでお茶にしない?」

死神姫の提案に、死神様・リズ・パティは大喜びです。

「魔女、良ければお前もどうだ?」

キッドが誘えば、エルカはバツ悪そうに「でも…」とちらりと死神様に視線を投げます。

「お前も今回どちらかと言えば被害者なんだ。父上だってもう怒ってない。一緒にパイを食べて、仲直りしよう。」

死神様に抱き上げられたまま、キッドはエルカに手を差し出しました。
エルカは嬉しくてちょっぴり瞳に涙を溜めながらその手を取りました。