死神姫・11


「ちょっとちょっと!アンタの出番はまだずっと先で、
出てきたとしても、『おぉなんと美しい姫だ』から始まって、『わたしと結婚してください』って数行喋るだけでしょー!」

死神姫に歩みよる王子に猛然と食って掛かる魔女・エルカ。

「そっちだって台本無視していきなりこいつに手を出そうとしてるだろ。お互いさまだ。」

王子は死神姫の半歩前に立ち、エルカから守るように、隠すように死神姫を庇います。

「姫、武器化した俺で、コイツを倒そうぜ。」

ダンスに誘うように死神姫に手を差し出す王子に、死神姫はきっぱりと拒絶しました。

「断る。」
「はぁ?!」

思わず間の抜けた声を出す王子ですが、死神姫は構わず続けました。

「俺はシンメトリーでない武器は使わない主義だ。
お前、魔鎌だろう?無理だ。断る。」
「断るって…。武器なしで魔女に勝てるのかよ?」
「…無理かもしれないな。」
「じゃあシンメトリーな武器以外は使わない主義とかなんとか言ってねーで、俺を使って目の前の魔女倒すしかねーんじゃねーの?」
「シンメトリーでない武器を使うくらいなら、俺は死を選ぶ。」

きっぱりと言い切った死神姫に、王子は開いた口が塞がりません。
逆に、魔女は死神姫の態度に感心してしまいました。

「すごく潔いゲコ。」
「でしょー。わたしのキッド君は生半可な育て方してないからねぇ。自慢の子なんだよね♪」
「へぇ…一体どんな育て方したら、あんな一本気な潔い子に育つ…って…あ…アンタっ…し…し…しにが…っ!
一体どこからっ?!」

気配を一切感じることなく、隣に立っている死神様に度肝を抜かれ、エルカはその場に腰を抜かしてしまいました。

「やぁ父上。」
「やっほーキッドくん♪お迎え遅れてごめんねぇ。」
「大丈夫だよ父上。それより、リズとパティは?」
「だいじょーぶだいじょぉぶ♪リズちゃんもパティちゃんも元気だよー。」
「よぉキッド。元気そうじゃん?」
「キッドくーん!追いて行くなんて酷いよー!」

死神姫に、その隣に立つ王子、そして腰を抜かした魔女とその魔女の傍らに立つ死神様と側用人リズ・パティ。
緊張した場は一瞬にして和やかムード(?)に転じました。