そこかよ!


「お前、本当に可愛いな。」
「…っな?!」

しまった、と気づいた時にはもう遅い。
図書館で読書にふけるキッドの向かいに陣取り、キッドが数冊机上にひっぱり出していた本のうち、
適当に一冊を引き寄せて、興味も無いのにページを繰っていた。
ページに視線を落とすのではなく、キッドに視線を注ぎながら。

頬杖をついて、興味もない本のページを一定のリズムで繰りながら、キッドの観察をする。
内容がどんなものかは分からないが、
ページを進めるたびに、にこにこと笑ったり、眉間に皺を寄せたり。
挙句の果てには瞳一杯に水溜りを作ってみたり、と無意識のうちに感情を表しながら本を読み進めるキッドに、
ソウルは心底そう思ったのだ。

そして、思うと同時に口から言葉が出ていた。

未だ想いを告げず、"友達"ポジションの現状では、もしかしたら口にすべき言葉ではなかったかも知れない。
現に、目の前のキッドは耳まで真っ赤にして、何かを言おうと口をぱくぱくさせている。

「あー…わりぃ…」

頭をがりがりと掻きながら、さて、どうフォローしたものか、と悩んでいるうちに、キッドがようやく言葉を発した。

「は…恥ずかしい奴だな、お前は。
急に"可愛い"などと…。男子に向かって言う言葉ではないだろう!」

図書館という事もあってか、幾分声のトーンは押えられては居るが、激しく動揺したような、上ずった声。
ソウルもキッドの言葉には賛同する。
もう一度、謝罪の言葉を述べようとしたところで、キッドはぶっきらぼうに呟いた。

「せめて、父上のように"キュート"と言うとか。言葉を選べ。」
「そこかよ!」

選択すべき言葉の問題なのか、意味は一緒だろう、とソウルはつい突っ込んでしまう。

(…わからねぇ…死神親子の感性が。
俺にはサッパリわからねぇ…)

照れて本どころではなくなったキッドと、その場で頭を抱えるソウル。
二人の相互理解への道はまだ遠い。