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彼女の秘密・3 「いだだ…っ…いだい"ですっ…ごめんなさいっ!!」 肩を極められ、ソウルは情けない涙声で許しを請うた。 「貴様っ!今どれだけ俺の怒りを買っているか、分かっているのかっ?!」 顔を真っ赤にし、肩を極める腕にさらに力を込めながら、キッドの表情はまさに怒り心頭。 髑髏を模したオーラが全身から立ち込めて、ピシっピシッと空気を裂く音がしている。 たまにその弾けた空気が木の葉を揺らし、枝から切り落とされたり、宙で葉の半分が切り裂かれたりしている。 今から10分ほど前、ソウルはトンプソン姉妹から紙袋を奪い取り、5分ほど前にキッドを探し出した。 場所は校庭のベンチ。 折りよく一人で読書をしていたキッドに紙袋を突き出し、 ソウルは開口一番こう告げたのだ。 「明日から、サラシは禁止でコレつけろよっ! 毎日チェックしてやるからな!!」 突然の言葉に訳が分からず、キッドは目の前に出された紙袋を受け取った。 そして中身を見たのだ。 「…これは、一体、なんだ?」 「なんだって、下着だろ、お前の。」 「なぜお前がこんなもの持っているんだ、ソウル?」 「リズとパティからだよ。とりあえず、お前サラシはダメだろ!」 と、言いながらキッドの両胸を遠慮なく鷲掴んだのだ。 「――――――っっ―――っ??!!!」 声にならない叫び声を上げ、キッドはそのまま激昂した。 そして、現在に至る。 いくら性別を偽り生活しているとは言え、この年齢でいきなり胸を掴まれるなど、思いもしなかったから、完全に油断していた。 今思えば、リズとパティには随分と酷いことをしたようだ。 同じことをされてみて、初めて分かることもあるのだな、とキッドは別の次元で考えながら、目の前のソウルに制裁を下すことを忘れない。 「俺が女だと知れればすぐ口説き落としに掛かるわ、遠慮なく胸を掴むわ、何のつもりだ一体!」 「痛いって…!肩…!!脱臼しちまう」 「こんな悪さをする腕がついている肩など、外してしまうに限る。」 「だから、悪かったって!つい…」 「つい、で済むか!戯けがっ!!」 貴様、女には見境のない下衆か、と言われ、ソウルは違う、と強く否定した。 「お前だからだろ!キッドだから、見境がなくなるんだよ」 半ばやけくそ気味に告げれば、若干、キッドの力が緩む。 「…なんだと…?」 「だから、相手がお前だから見境いなくなるんじゃねーかよ。 俺がマカ口説き落としたり、椿の胸掴んだりしてるか?」 言われてみればそうだ、と思いはするが、どうにも納得出来かねるキッド。 「何故、俺なんだ?」 「…お前…それ、聞く?」 キッドの力が緩んだことで、肩の痛みは若干薄らいだ。 そのせいか、少しだけ自由になる体をひねって、キッドの顔を仰ぎ見る。 本当に、疑問符を浮かべながらソウルを真っ直ぐに見つめる視線。 「…マジかよ……」 真剣なキッドの視線に、ソウルは心底溜息を吐く。 普通、ここまで言えば分かりそうなものではないか。 (どこまで鈍感なんだ、この坊ちゃんは。…いや、お嬢様か…) 眩暈がする。 とりあえず、納得するまでキッドはこの肩を解放してくれないだろう。 先日キッドが女性だと知れた保健室でも、結局ソウルの意図は正しくキッドに伝わらず、有耶無耶になってしまったのだ。 今日は、何時間掛かっても、キッドに納得してもらわなければ、 この先話を進め辛いと判断し、ソウルはとことんまで問答することを覚悟した。 「……お前が、好きだからだよ。」 「俺も好きだが?」 「そういう好きじゃなくてだな、付き合って欲しいって意味の、好きなんだよ。」 「付き合うのも構わんぞ。どこまで行くんだ?」 「…まぁ予想通りの答えだよ。」 「?」 ソウルもこのやり取りは予想の範疇だ。 先日の保健室の再現のようなやり取りではダメだと判断したソウル。 結局先日も言葉で説明するだけでは上手く行かなかった。 キッドが油断したところを、一度武器化する事により、その拘束から逃れ、再び元に戻る。 「…あ…っ」 咄嗟の事にバランスを崩したキッドを正面から抱きとめて、ソウルは呆然とした表情で見上げるキッドの唇を奪う。 「……」 「こういう意味。」 分かったか?と問うが、反応がない。 「おーい、キッド?」 硬直状態のキッドの前で掌をヒラヒラとかざす。 「…まいったな…」 今は人が居ないとは言え、キッドを抱きとめた状態で立っていれば、誰か来た時に流石に不審がるだろう。 ここは校庭で、体育の授業でも始まれば生徒が集まる。 しかも相手はキッドで、死神様の"息子"。 注目を集めないはずが無い。 「とりあえず、場所変えるか。」 ソウルは一人呟いて、キッドが読んでいた本、トンプソン姉妹から預かった紙袋を持ち、姫抱きにしてキッドを抱え込んだ。 キッドの意識が戻ったのは、ソウルが場所を移動してから5分後だった。 |