死神家族計画


「ねぇキッドくん。男の子か女の子、欲しくないかい?」
「…急に何言ってるんだい父上?」

久しぶりの家族団らん。
とは言っても、リズとパティが寝静まった夜遅く、死刑台屋敷のキッドの部屋へ一方的に死神が訪れただけなのだが。
いつも時間など問わず、突然ふらりとやってくる死神に慣れっこのキッドは、手早く階下のキッチンからお茶とお菓子の用意をして、自室に戻ってきた。

年代物の華美でない、けれど一目で上質だと分かる細工の施されたテーブルに向かいあって紅茶を啜るキッドに、死神が告げた。

「キッドくんも一人は寂しいかなって思ってさ。」
「…それって、父上が再婚するってこと?」

キッドは母の事を知らない。
気づけば父一人、子一人で、デスサイズスやその職人達に囲まれていた。
だから、母が居なくとも寂しいと思ったことはないし、気にしたことも無かった。
こう言ってしまうと、自分を産んでくれた母に対し、とても失礼かもしれないが。

「わたしの再婚、キッドくんは反対?」
「…いや…正直良く分からないな…。」
「なぜ?」
「俺は母上を知らないし…父上だけで良いと思っているから…」

兄弟が欲しいか、と急に言われても戸惑うばかりで、答えに困る。
というのが本音だ。

「…キッドくん…」

キッドの態度に何を思ったか、死神は手招きをしてキッドを抱き寄せた。

「大丈夫だよ。わたしだって、キッドくんが生まれるまで父性のカケラも持ち合わせていなかった。
だから、きっとキッドくんも孕めば母性なんかあっという間に芽生えるよ。」

抱き寄せられながら、キッドは死神の言葉に違和感を覚えた。

「…父上…なんだか話が読めなくなってきたんだけど…」
「ん?そうかい?」
「もう少し詳しく、説明してくれない?父上の再婚相手って、誰だい?」

死神の胸から顔を上げて、仮面を見つめる。
その仮面は嬉しそうに綻んでいた。

「誰って…キッド君に決まってるでしょう?」
「…????…」

眉を寄せて不審がるキッドを他所に、死神の想いは猛スピードで遠くへ馳せてゆく。

「わたしとキッドくんが再婚して、子供が生まれて。
一姫二太郎が良いっていうから、どっちか一人って決めずに、女の子、男の子って順番で作ろうか♪
大丈夫!わたしが気合を入れれば性別なんて思いのままだよ。
で、白い壁に赤い屋根の家で、周りは草原が良いなぁ。
デス・シティーの砂っぽさには飽きちゃったし、キッドくんとの子供を育てるなら、近くに小川の流れる草原が良い。」

この後も延々と夢を語る死神の腕から抜け出し、キッドはベッドにもぐりこんだ。

(…父上もお疲れなんだな…)

死神の本気度を知らないキッドは、ベッドの中でこっそりと耳栓を取り出し、死神の言葉をシャットアウトして眠りについた。