いちごパフェ


よくそんな甘ったるいものが入るな、と。
その光景を見ながらソウルは感心してしまう。

良く晴れた春の日の午後。
オープンカフェには年頃の女の子がつめかけて、
話の花もデザートの花も咲かせている。
そんな一角にソウルとキッドは座っていた。
ある意味異色の光景だろう。

他のオープンテラスのパラソルはブルーとかブラックなのに、
偶然にも通された席のパラソルはその店で唯一白い。
しかも軽くレースがあしらわれている。
その白いパラソルの下、黒い上下のスーツをきっちり着込んだキッドとTシャツ・パーカーのソウル。

なぜ二人でこんな場所にいるかと言えば、学校帰り、キッドに誘われたのだ。
新しくカフェがオープンしたそうで、そこのあるメニューが気になったらしい。
食べに行きたいが、一人では気恥ずかしいのだとか。
はじめ、パートナーを誘えば良いのにとか思ったが、どうやら武器姉妹は甘いものより酒が良いらしい。
マカや椿、ブラック☆スターなどと出かけられることを思えば、
自分を誘ってくれてよかったとソウルは思った。

しかしながら、連れてこられたカフェはいかにも女の子が好みそうな、
お花やらリボンやらで飾られた店内。
もちろん客も圧倒的に女性が多い。
店に到着した瞬間から帰りたい気持ちでいっぱいだった。

そんな中、先ほど運ばれてきた注文の品。
ソウルの前には冷たく冷えたサイダー。
グラスの底から水面に向かって、いくつもの気泡が生まれては消えていく。
サイダーに手を伸ばしてストローをくわえ、刺激的な液体を飲み込む。
サイダーのグラス越しにキッドを見つめた。

彼は目の前のパフェグラスに綺麗に盛られた苺パフェと格闘中だった。
綺麗に飾り切りされたいちごに生クリーム、練乳と、ゴーフレットにクッキーまで飾られたパフェ。
キッドは、キラキラと瞳を輝かせて、スプーンですくっては口に運ぶ。
口に入れたとたん、キラキラとしていた目がとろり、と弛み、広がる甘みに自然と笑顔がこぼれる。
長い柄のスプーンでグラスの中からバニラアイスといちごアイスをすくって、ふたたび口に入れる。
アイスクリームが溶けるのを待っているのだろう。
もごもごとほっぺたが動いたかと思えば、ほぅっと溜息が漏れる。

幸せそうなキッドの顔。
甘ったるそうな苺パフェよりも甘そうな、べっこう飴のような瞳に映る自分。

目が合ったついでにソウルは聞いてみた。
「キッド、お前今幸せ?」
聞かなくてもキッドの表情を見れば分かるのに。
「…なんなんだ、突然。」
せっかくのデザートの時間を邪魔されて、憮然とした顔で答えるが、かまわずソウルは続けた。
「…俺は、幸せかも。」
くわえたストローをがじがじと齧ると、キッドからは「行儀が悪い」と顔を顰められた。

「食べるか?」
キッドから差し出されたスプーンには、バニラアイス・いちごアイス・生クリーム・練乳、さらには苺、と
山盛りに乗っていたが、ソウルは笑って口を開いた。
苺がこぼれ落ちないように、注意深く、開かれた口へスプーンを運ぶキッド。

口に広がる想像以上の甘さに苦笑いしながら、ソウルは思った。
たまにはこんな日があっても良い。

その後、このカフェで二人の光景を目撃した女性客たちから、
唯一白いパラソルのテーブルに通されたカップルは幸せになれる、という
ジンクスが流れたとか流れなかったとか。