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第一指導室 ソウルは部屋に入るなり軽く眉をひそめた。 この独特なアロマの香りと暗めの照明。 以前、マカとこの部屋で、お互い欠点を言い合う授業を受けたのは記憶に新しい。 今日はこの部屋にキッドと二人だ。 「なぁんで、俺はお前とこんなところにいるんだ?」 不機嫌になるのは仕方ない。 なんで好きな相手の欠点を、あえて言わなければならないのか。 アロマの効果も相俟って、考えただけでもイライラしてくる。 しかしながら相手は神様。焚かれるアロマにものともせず、至って平常心だ。 「仕方なかろう。父上から直々の指導なのだからな。」 「…また父上かよ…」 げんなりと溜息をついて正座していた体勢も崩してしまう。 胡坐をかいて、頭の後ろに手を組み軽く伸びをする。 「デスサイズになるための試練だと思えば、お前にとってもプラスになるじゃないか。」 そんな姿を見て、キッドは困ったようにソウルを促す。 「魂の波長をより高いレベルで共鳴させるためにも、訓練だと思って。お前との前にはリズとパティ、椿とも入ったんだぞ。」 「…わかったよ。」 ようやく向き直り姿勢を正したソウルに満足して、微笑む。 「さ、何でも言ってくれ。」 「まぁ…お前はアレだよな。バカみたいに左右対称好きだよな。もう少し柔軟になれよ。」 「…む。いきなり核心を…。それはリズにも言われたな…。」 何でも言ってくれ、とは言ったものの、いきなり核心をついてくるソウル。 キッドは頷きつつも早くも凹みそうだった。 「だいたい、お前は誰にでも優しすぎるんだよ。」 「それは聞き捨てならんな。優しくて何が悪い?」 「勘違いするだろ、いろいろと。」 「?勘違い…?なんだ、それは。」 「優しくされると、みんながみんな、自分に気があるのかと思うだろ!」 「気がある?」 キッドから疑問符がたくさん飛び出ていることを知りながら、ソウルは止めるつもりはなく続けた。 「お前が誰かれ構わず優しくするから、優しくされた側はお前が自分に気があるんじゃないかって思うんだよ。」 「なんだそれは!気があるとかないとか。仲間を気遣って何が悪い?」 正しく正座したその膝に、握った拳を乗せて前のめり気味にキッドが食いつく。 「ソウル、お前の言う事はイマイチ理解ができん! もっときっちりかっちり、説明してもらおうか。」 「おぉ上等だ!いいか!そもそもお前は無防備すぎんだよ! 本気だしゃ、めったな事で負けるわけねーのに、シンメトリーだなんだとこだわって押し倒されるわ 殺されそうになるわ、いい加減にしろよ!」 「押し倒された覚えなどないぞ!それに、シンメトリーの何が悪い!」 「悪いね!そんなもんにこだわって命落としたりしたらどうすんだ」 「そ…そんなもんっ?!」 自分の主義を全否定されて流石のキッドの目にも涙が浮かんできた。 「お前が神だって事は分かってるさ。 でもお前が傷ついて俺がなんとも思わないとでも思ってるのか?!」 「…ソウル?」 「怪盗ルパンのときも悪霊ファラオのときも!」 「…え?えっ??」 ソウルと出会う前の戦跡を持ち出され、キッドに"怒り"とか"悲しみ"よりも動揺の方が色濃く現れる。 「しかもフィッシャーマン・キングみてーな卑猥なヤツに何言われてんだよ!」 「…ちょ…っと待て…ソウル…」 「竿やら玉やら! そもそもだな、なんで課外授業じゃなくて任務なんだよ。 せっかく一緒に課外授業いけると思っても、その潔癖症のせいで結局一緒にこなせねーし!」 だんだんと気色ばむソウルとは対象的に、キッドは瞳を閉じて額に指を当てた。 前のめりだった姿勢もやや引き気味だ。 「COOLじゃねぇと思って今まで言わなかっただけで、俺はものすごく怒ってんだからな!」 「…いや…まぁ…その……なんだ…」 「分かってんのか、キッド?!」 「…すまなかった。」 あまりのソウルの勢いに思わず謝ってしまったキッド。 そんなキッドに少しだけ気が済んだのか、ややトーンを落としてソウルは腕を組んだ。 「分かれば良いんだよ、分かれば。 じゃあ、今度からは俺にだけ優しく接しろよ。他は気にすんな。」 「えぇー…?」 「き・に・す・ん・な!」 「…はい…」 「課外授業は一緒にやるぞ。任務も断っとけ!」 「いや、でもそれはだな…」 「こ・と・わ・れ!」 「…じゃ…できる限り…」 ソウルの勢いがあまりにもすごく、キッドは気圧されて小さくなってしまう。 「あと、これからは、"父上"って言うの禁止な。」 「いやいや、待て。流石にそれは…」 「キッド?」 優しそうに微笑んでいるが、ちっとも優しくない。 チラチラと白い犬歯を覗かせて、ソウルの言葉を否定しようものなら、すぐにでも噛み付かれそうなほど凶悪な魂の波長。 「…うぅっ…ひっく…なるべく…頑張りマス…っぐす」 あまりにもどす黒いオーラと魂の波長についにキッドは泣き出してしまった。 「分かればいいんだよ。怖がらせてごめんな?」 めそめそ泣いているキッドの頭をぽんぽんと優しく撫でて、 ソウルはその唇に音を立ててキスを落とした。 「…死神様の息子を黙らせるとは… なかなかやるねぇ、ソウル・イーター」 アロマを炊きながら、二人の様子を見ていたシュタインが、タバコをふかしながら呟いた。 |