ピアノの音がひびく。
軽やかに、伸びやかに。

すこしかしこまった服を着たソウルが、グランドピアノの前に座って、鍵盤を叩く姿は見ていてとても自然で。

そのピアノの周りで、俺とマカがワルツを踊る。
普段は絶対に着ないようなヒラヒラとした舞踏用のドレスを身にまとうマカはとても綺麗だ。

ヒールの高いダンスシューズもはきこなして、俺のリードに任せてターンをしたり、ステップを踏む。
普段ツインテールの髪を下ろして、ゆるくウェーブを掛けた栗色の髪が揺れる。

側には微笑む椿と、ワインを飲むトンプソン姉妹。
ブラック☆スターは少しでも高いところが好きらしく、壇上で見得を切っている。

ピアノの音とはそぐわないが、それが返って彼らしい。

マカが微笑む。
ピアノの音以外は聞こえないが、その口元から名前を呼ばれたのが分かった。

幸せだと思った。
そして、唐突に肩を揺さぶられて俺の意識は浮上した。

「キッド君。朝だよ〜♪」
「ちち…うぇ…?」
「どったの〜?」

軽い、父・死神の声。
けれど優しい指先はキッドの眦に触れる。

「悲しい夢でも、見たの?」

どうやら涙がこぼれていたらしい。

「…とても…幸せだった頃の、夢…だった気がします。」

呟けば、死神の胸の中に迎え入れられる。
温もりは俺の体から、心にまで染み入るよう。
今はもう、500年も前の記憶。
唐突に思い出して時々夢を見る。

「大丈夫。キッド君の側には私がいるよ〜。
ずっと、ね。」

額に口付けを落とされて、俺は父を見上げる。
仮面のない素顔の父は、昔からずっと変わらない容姿をしている。

「…側に、居て。独りは…嫌だ。」
「わたしも、おなじだよ。」

父と子、世界には二人だけ。