黒星


再びキッドに呼び出された市街のバスケットコート。
前回は『☆をつけて名乗りたい』という、ある意味とんちんかんな話であったが、果たして今回はどうなのか。
どことなく落ち着かなく、そわそわとしてしまうブラック☆スター。
本当なら、より目立つ場所でキッドを待つ予定だったのに、悶々と考え込んでしまって、それどころではない。
今度は一体なんなんだ、とドキドキまでが止まらない。

(やべぇ、やべぇ、やべぇ。こんなの絶対オレ様らしくねぇ!
キッドに呼び出されたくらいで動揺するとは…)

一人ベンチに座り、首に巻いてきた長いマフラーの端を、いじいじといじり倒してしまう。
そんな自分にも腹が立つのか、ブラック☆スターは首に巻いていたマフラーを取り、
地面に投げつけると何度も何度も踏みつけた。

「…何をしているんだ、ブラック☆スター…」

その様子を見て、呆れたように声を掛けるキッド。
「お…お前が遅いから!イライラしてたんだよ!」
精一杯の虚勢とその場のごまかし。
ブラック☆スターは少しだけ焦りつつ、キッドに向き直った。
「何を言う。俺はきっちりかっちり時間通りだろう。」
腕を組み、ややふんぞり返っているが、確か約束は1時間前だったはずだった。
おそらく、シンメトリーがどうとか、額縁が歪んでる、とか、散々やって来た後なのだろう。

「それより、用って一体なんなんだよ。」
ブラック☆スターが心の動揺を悟られまいと、キッドに話を振った。
「あぁ…そのことか…。
実はな、先日俺はお前が素晴しい、と思っていたんだが…」
「オレ様のすごさは神をも凌ぐぞ!」
「いや、良く考えてみろ。"ブラック☆スター"だぞ。」
「それがどうした?」
「ブラック☆スターは"黒星"とも表現できるではないか。」

このあたりから、ブラック☆スターには嫌な予感がしていた。

「…だったら、なんだよ。オレ様の凄さに変わりはねーだろ。」
「黒星、つまり、負け、という意味だ。」

ちょっと溜息をつきながら呟くキッド。
「……何が言いたい?」
想像通りの展開にブラック☆スターは少々お怒り気味だ。
自分の名前が"負け"に繋がる、などと指摘されて、誰が面白がるだろう。
「お前は、神を超えるんだろう?」
「もちろん。」
「では、黒星は良くない。」
「………どうしろって?」
「金星にしろ!」
「はぁ?!」

ビシリ、と指をさし、キッドは妙案だと言わんばかりに瞳を輝かせている。

「ゴールド☆スター、もしくは、ゴールデン☆スター。
今日からそう名乗ってはみないか?」
「断る!」

キッドが現れる前の、あの胸の高鳴りはどこへやら。
おかしな提案により、ガックリとうなだれて、ブラック☆スターはその場を後にした。


後日談


「なぁ椿、オレ、改名した方がいいのか?」
「…急にどうしたの?ブラック☆スター」
「いや、黒星は負けって意味だから、金星とかにしようかなって。」
「ブラック☆スター…。」
(じゃあ、ゴルスタって略されたり、ゴルキドって表記されるようになるのかしら…)
暫しの沈黙の後、椿は極上の笑顔で答えた。

「気にすることないと思うわ。
やっぱり、ブラック☆スターは、ブラック☆スターだもの。」