「あぁーん、スペードの5止めてる人だれー?!」
「あ、すまん。俺だ。次に出すから泣くな、マカ。」
「ハートの9止めてるの誰だよ…」
「…俺だ…」
「…いつ出していただけますか?」
「俺の気分次第。」





パン☆ぷりん☆パニック 3





とりあえず遊ぼう、ということになって七並べをする事になった。
トランプを持ち出したマカがどんなゲームが良いかキッドに聞くと、ババ抜きしか知らないというからだ。
大富豪、神経衰弱、ぶたのしっぽ…順番にゲームしてみたが神ゆえの引きの強さかよっぽどの強運の持ち主か。
キッドの一人勝ちでマカもソウルも度肝を抜かれた。
七並べもカードの引きが関係するが、一通りやってみようということになって現在に至る。
案の定、キーとなるカードはキッドが握っている状態で。
パス3回までOKとは言いつつも、マカもソウルも結構ギリギリなラインで奮闘していた。
そして冒頭のやりとり。

「キッド…お前マカにはすぐカード出してやるくせに俺に対しては"気分次第"かよ」
「戯け。女性を泣かすのは主義ではない。」
マカは笑顔の方が良い。と超天然鈍感坊ちゃまは平然と言ってのけ、
宣言どおりスペードの5をテーブルに置いた。
「ありがとキッド♪」
ニコニコと機嫌の良いマカに対してソウルの機嫌は悪い。
さっきからすってんてんにされるのはソウル。
マカとキッドは共謀してゲームを勝ち進んでいる。
当然、面白くない。
(本当に、猫みたいな女王様っぷりだな、キッド。)
しかも本人に自覚が無い分性質が悪い。
もっと性質が悪いのは、そうしてキッドに振り回される事態も状況も、
そこに置かれる自分自身に対しても嫌だと思うどころかソウル自身が楽しんでしまっていることだ。
まったく、とんだ相手に惚れてしまったものだと思う。
「ソウルの番だよー」
「くそっ…パス。」
「もう後が無いな、ソウル。」
ふふん、と笑うキッド。
カードを出せるか出せないか、今はキッドにかかっている。
手持ちの札はたくさんあるのに、生憎とソウルが出せるカードはもう無いのだ。
この次、キッドがハートの9を出してくれないと、ソウルは負けが確定する。
「負けたらバツゲーム、今日の夕食当番だからね!」
マカが楽しそうに告げる。
料理自体は嫌いではないが、料理している間キッドに構えないのが辛い。
せっかく今日はキッドが来ているのだ。
本当はピザでも取って手軽に済ませ、ずっと側に居たい。
しかも今目の前にいるキッドはなんでか知らないが女性化してしまったキッドなのだ。

魔女の魔法が原因とのことだが、もしこのままキッドが元に戻らなかったら、
ソウルはキッドを嫁にもらおうと考えていた。
もし嫁がダメなら自分が婿に!と切望するほど。

「ソウル、出してほしいか?ハートの9」
意地悪く微笑むソウルの想い人。
ハートの9のカードを白い華奢な指でつまんでひらひらとかざし、下から覗き込むようにソウルの顔色を伺う。
長い髪が肩からはらりとこぼれ、そのこぼれた房を追うようにサラサラといく筋かがさらに流れ落ちた。
本人は香水をつけているわけでは無いといっていたが、
空気が振動するたびに漂ってくる甘い香りは一体なんだろう。
「…フェロモンか?」
「は?」
思わず口に出してしまって、慌ててソウルは頭を横に振った。
「なんでもない!」
「で、どうなんだ?ハートの9、出してほしいのかほしくないのか。」
「お前、ぜってー楽しんでるだろ。」
半眼になって睨めば、キッドは楽しくて仕方ない、と言った風情でかざしていたカードで口元を隠すようにする。
くすくすと笑う姿の愛らしいこと。
「お願いしなさいよ、ソウル!このままじゃ呆気なさ過ぎてつまんないじゃん。」
マカの言葉にため息を吐いた。
確かに、このまま終わってしまっては良いところナシだ。
ひとつ軽く舌打ちしてからソウルはキッドに向き直った。
「ハートの9出してください。オネガイシマス。」
「んー、いまいち誠意が感じられんな。」
(ぜってー楽しんでやがる…)
目の前のキッドとマカの表情。
たかがゲームごときに熱くなるのはCOOLじゃないが、この二人の余裕の笑顔がかなり癪に障る。
「いーから、出せよそのカード。」
キッドの唇付近にかざされたカードを取ろうとして、手をのばす。
指が届くか届かないかというところでカードは忽然とソウルの前から消えた。
どこにいった?と周囲をきょろきょろ見渡すが、見つからない。
そしてキッドを見る。
いたずらっ子のように微笑んだかと思えば、しなやかに右腕が伸びてきてソウルの耳元を掠める。
優雅な所作に時間が止まったかのような錯覚に陥るが、それもパチンという音で感覚が引き戻された。
「…???」
一瞬、何が起こったかわからずに何度かまばたきすると、キッドが可笑しそうに笑った。
「ほら、カード。」
目の前にはハートの9。
キッドの白魚のような指に挟まれたカードはソウルに渡された。
「えー!すごい!!今のどうやったの??」
興味津々、マカが身を乗り出してキッドの手を取る。
「簡単だ。カードをこうして…」
種をマカに教えるため、間近にあったキッドの気配はソウルから遠のいた。
当然、七並べもそっちの気となったが。
ソウルは暫くハートの9のカードを握り締めたままだった。



なんのかんので結局手品談義になり、手持ちのカードが多かったソウルが負けという事で
夕食はソウルが担当することになった。
ちょうどリズ・パティがパジャマを持ってやって来たので、マカは二人を伴って夜みんなで食べるお菓子を買いに出かけた。
残されたキッドは一人ソファに座っているのも飽きたのか、ソウルが立つキッチンにやってきた。

「ふむ…。割となれた手つきだな。」
感心するような感想を述べられ、ソウルは手元から目を離さずに答えた。
「まぁマカと二人で交代しながらやってるからな」
お前のトコはあの姉妹が作ってるのか?と質問すると、キッドはあっさり首を横に振った。
「リズとパティは料理どころか家事全般できないぞ。」
「…じゃあ、メシの支度どうしてんだよ。」
「オレがしている。」
「マジ?」
「もちろん。学校がある時は昼は作らないが。基本三食作ってるぞ。」
手伝おう、とキッドはソウルの傍らにあったジャガイモを手に取った。
子供とは言え一応死神様。
その死神様が包丁片手にジャガイモの皮を剥くという状況にソウルは軽くめまいがした。
「掃除はどうしてんの?」
「オレがしている。」
まぁ、そうだろうなと返して、極度の左右対称愛好者っぷりを思い出す。
「む。しまった…」
「どうした?」
処刑台屋敷の広い広間や居間、食堂を思い出して掃除も大変だろうなと考えていると、
隣に立つキッドが軽く舌打ちした。
外見的には現在女の子なのだから、舌打ちはやめた方が良いんじゃないか、と親父的な事を思いながら
いつもより低い位置にあるキッドの頭を見る。

「ソウル、袖を捲ってくれ。今日の服はビラビラしていてかなわん。」
なるほど、長めの袖は家事には不向きなようだ。
「仕方ねーな。ほら。」
作業を中断し、キッドの細い腕を覆う袖を捲る。
左の次は右。
なんだか台所で二人並んで立ち、袖をまくるなど新婚のようで柄にもなくソウルは照れた。
「エプロンでもするか?なんかこの服高そうだし。」
照れ隠しのために背後のイスにかけてあったマカのエプロンを手にしたのだが。
「うむ。じゃあエプロンも頼む。」
キッドの背後に回ってエプロンをかけるのも倒錯的で性欲中枢を刺激される。
エプロンを首に通すと、少しでもソウルがエプロンをつけやすいようにだろうが、キッドが軽く万歳をする。
サイドのリボンを細い腰に回してぎこちない手つきで蝶々結びをした。
「できたぞ。」
「うむ。ありがとう。」
にこっと笑うと、再びジャガイモを手にとって皮を剥き始める。
剥いているのはジャガイモの皮なのに、まるでりんごの皮を剥くかのように手際良く包丁を扱うキッド。
「随分慣れてるな。」
「オレは死神だぞ。何でも完璧だ。」
流石毎日三食準備してるだけの事はある。
包丁捌きは格別だし手際も良い。
「で?今日は何を作るんだ?」
「あぁ…キッド何か好きな食べ物無いのか?」
質問に質問で返されてきょとんとするキッド。
「…好き嫌いは特に無いが…」
「無いのかよ、好物。」
ソウルの質問にキッドはうっと詰まって視線を泳がせる。
頬を赤らめて良いにくそうにしている姿はとても可愛い。
「…キッド?」
「…笑わないか?」
いつもより身長が低くなっている分、キッドはソウルを上目遣いで見上げた。
その視線にどぎまぎしながらソウルは頷いた。
「笑わない。」
「…………プリンだ……」
「プリン…ね…」
この年齢の男の子(今は女の子になってしまっているが)の好物がプリンとは…。
流石キッドと言うべきか。
「呆れてるんだろう。」
ぷくっと頬を膨らませて、キッドはひき肉を手に取った。
「や、別にそんなん思ってねーから。」
「本当か?」
「あぁ。思ってねーって。」
「じゃあ、何で聞いたんだ。」
「キッドの好きなもんでも作ってやろうかと思ったからさ。
まさかスイーツが出てくるとは思ってなかったけど。」
流石に、プリンはメインディッシュに出来ない。
手馴れているとは言っても、ソウルも作れるレシピは少ない。
キッドのことだから、と勝手にオムライスとかカレーとかそういった類を想像していたのだが。
逆に死神様の息子ということで毎日豪華な食事をしていたのなら、
先日マカに教わった肉じゃがでも作ろうかと思っていたのだ。
「ふむ…。それなら、オレが作ってやろう。」
まぁリズとパティの好物だがな、と続けて鼻唄でも歌い出しそうな雰囲気でキッドは作業を続けた。



next?





なんだか女の子描写を謳歌中www

うちのキッドくんはマカが好きです。マカもキッドが好きです。
だから仲良し☆
お互い、好きと愛の間って感じの感情ですが。
キッド的に、マカの中身もシンメトリーな外見も好みだと思うんです。
淡い恋心☆なんて。
それでそれ見てソウル嫉妬、みたいな。