冷静と情熱の間…は平常心?





「くそっ…鬱だ…くそっ…鬱だ…死のう…っ」
大きな大きなベッドの中央で、枕に顔を埋めて可愛い可愛い恋人は。
さっきからずっとぐすぐすと鼻を啜りながら素肌を晒してくれている。
もう一度その肌を味わいたくなるのをぐっと堪えて、ソウルはその背に優しく薄い掛け布団をかけてやる。
けれど、シルク製であろうその布団は、キッドの肢体をくっきりと浮かび上がらせて、
素肌を晒す以上にソウルを煽った。
キッドも含め、自分も何とか落ち着こうと、キッドの背を優しく、繰り返し軽く叩く。
「悪かったよ、キッド。だからもう泣き止んでくれ。」
「うっ…うっ…あんな…あんなっ…はずかしぃ……ぐすっ…」
「あー…悪かったって…でも可愛かったよ。キッド。」
その少し汗ばんだ艶やかな髪にそっと唇を落とすと、キッドが振り返った。
「っ…この…たわ…っ…ぃつ…!」
けれど、振り返ろうと体をひねると下肢に痛みが走り、再びキッドは枕に口付ける。
「うぅ〜…オレはクズ神だ…だからこれしきの痛みに…くそっ…
しかもあんな…あんな…あられもないっ……うわぁぁあん…っ」
しくしくめそめそ、シーツを握り締める手すらソウルには愛しくてしょうがない。
シーツに皺を作る手をそっと包み、しゃくりあげる背をそっと抱く。

キッドの白磁のような肌に散らされた紅い花びらは、既に少し色が沈んでしまっている。
その一つを指先でなでながら、最中に言われた事を思い出す。
本当に、あと一日もしないうちに消えてしまうかもしれない。
それはなんだか惜しい。
「…じゃあ…恥ずかしくなくなるまで…毎日でも抱くってのはどう?」
さっきの失敗を考慮してか、今度はゆっくりとキッドがソウルを見上げる。
潤んだ、大きな金色はソウルを見つめる。
その表情にはありありと『ありえない』と浮かんでいる。
怯えるようにふるふると首を横に振るキッドは手を伸ばしてソウルをぐいぐいとベッドから押し出そうとした。
一生懸命腕を伸ばしたところで、広いベッドの上からソウルが落ちる、ということは無いのだけど。
耳まで紅く染めて枕に突っ伏してしまったキッド。
その少し長い襟足を摘んで、ソウルがくいくいと引っ張る。
暫く繰り返すと、ようやく不機嫌そうにキッドが振り向く。
「…なんだ…?」
そのまぶたに、唇にソウルは愛しさを込めてキスをする。
「とりあえず…、朝がくるまで抱きしめてていい?」
空はまだ若干白んできたばかり。
日が昇るまでにはまだまだ時間がある。
授業もあるし、体も清めたいが、まだこの恋人のぬくもりも味わっていたい。
耳元をくすぐるように囁けば、キッドはさらに頬を染めて枕に顔を埋めてしまう。
勝手にしろ、とソウルの耳元に届き満足そうにキッドを抱きしめた。

キッドと一緒にいて、冷静でなんていられるわけがない。
いつでも、どこでも。心も体も全部欲しい。
その想いが時に暴走してしまうほどに。
無意識に男を煽ってくれるキッドを前に、平常心を保つのがやっとの状態だ。
(クールを売りにしているこのオレが、なんてザマだ…)
けれど、それすらも愛しく感じるのだから、完全に参ってしまっているのだろう。
今は未来<サキ>の事など考えたくない。
腕の中にすっぽり収まる体。
筋肉はついているはずなのに、どこか丸みを帯びているようなキッドの体。
目の前の、小さな死神の体を抱きしめてソウルは甘い香りを胸いっぱいに吸い込む。



朝がくるまでもう少し。



end




くさっ…。
誰か…誰か蓋を……orz
雲に新鮮な酸素と身もだえするようなソウキドを…