ころがった幸村の首を愛おしそうに抱き上げ、政宗はまだ温もりを遺す幸村の唇に、己の唇を重ねた。

「幸村…来世では、夫婦になれたら…
否、やはりお前とは対等でいたい。
男女の関係よりも真、よき好敵手でありたい…じゃが、お前がわし以外の妻を迎えるのも癪じゃな…。」

どう思う、幸村?
そう呟いて、政宗は無造作に首をぶら下げた。

傍にくのいちの気配を感じ、政宗はうつろな瞳を気配のする方へ向けた。
すでに炎と、煙で良くは見えなかったが、おそらく傍にいるだろう。

「悪いの、くのいち。
おまえの主、わしが頂いた。もう、未来永劫わしのものじゃ。」

弧を描く唇。
ゆらめく炎に照らされた政宗の顔は、酷く妖艶だった。



城内がざわめいている。
この炎に、みな驚いているのだろう。
だが、逃げる経路は確保してある。
そのために、日ごろ城中を歩きまわり、火の回り具合の計算、
もっとも安全な逃げ道を探しておいたのだから。

だれも二人の道に横槍は入れさせない。
だれも一緒に逝くことを赦さない。





欲深く愛したのは、果たして幸村だったのか、政宗だったのか。





想いは深く、道をえる程に。







政宗独白。
結局、政宗も幸村が好き。
不器用なんですね、お互い。