恋文屋、はじめました。





って言ったって、『恋文屋』が何かって、説明しなきゃわかんないよねぇ?
『恋文屋』って言うのは、遠くはなれた人へ文を出す、まぁ早馬とか、飛脚とか。
そういった部類と同じ…かな。
ただ、早馬や飛脚と違う点、運ぶものが"恋文"専門ってコト。

そんなものの需要があるのか?って思ったでしょ。
でもね、コレって意外と需要があるんだよ。
だから商売成り立ってる訳だしねぇ。

戦で、遠くに出兵してる恋人を探し当てるのって、至難の業。
だから、アタシたち忍びが活躍するって訳よ。
ほかにも、身分の高い人がこっそり人目を忍んで頼みに来ることもあるのよ。

戦は、情報戦だって基本は知ってるよね?
ハッキリ言って、敵に情報を知られるのって、すっごい危険な事なんだよ。
もしかすると密偵が潜んでいるかもしれない。
そうやって疑心暗鬼になってる武将も沢山いる。

それにもし途中で襲われたら?
届け先が歓迎してくれない場合もあるし、その時には住居に忍び込むコトだってする。
そんな危険なコト…しかも恋文なんて私用でしょ?
それに優秀な部下や信頼してる部下を使うなんて、勿体無い。

でも、アタシたちは、もらった金額分、きっちりお仕事として、文を渡しにいく。
要望があれば、その場で返事も貰って帰ってくるけどね。
身分も名前も偽ったって問題ないの。
運ぶものが"恋文"で、お金さえ払ってもらえたら。

秘密厳守。それがこのお仕事の鉄則。
信頼第一、秘密厳守。それが売りだから、絶対に秘密は洩らさないし。
お互いあとくされ無いよね。

…って言うのが、当初の売り込み。
そうやって、信用と信頼を得て、今ではかなりの数の恋文を捌いてる。
だけどコレって表の顔。
だってアタシ、本当は真田幸村さま配下、忍び衆が一人、"くのいち"なんだよね。にゃは。



最初にも言ったとおり、戦は情報戦でもある。
こうして、恋文屋をする事で、敵の情報を取得することも出来るし、
弱みを握ることも出来る。
恋人を人質に取ったり、脅迫に使ったり。
…そういう事だって、出来るのになぁ。

幸村さま、そういう卑怯な手は一番嫌うの。
良い忍びの条件、それは心を殺して主の命令にのみ従い、疑わないこと。
だから、アタシも"恋文屋"で知りえた情報は何も言わない。
これは、幸村さまだって知らない、あくまで副業だし。
服部半蔵、おねねさん、風魔の小太郎まで巻き込んじゃってる訳だから、
秘密とは言っても結構な規模なんだけどね…。

何で恋文屋なんてやってるのか?って聞かれると、
それは…まぁ…。
幸村さまの恋文を安全に確実に届けるためなんだけど。

幸村さまは、アタシの副業を知らない。
時間をかけて、ゆっくりと規模を拡大してきた"恋文屋"だもん。
風の噂で幸村さまのお耳に入るようにして、幸村さまから足を向けてもらえるように。
今では、幸村さまは"常連客"の一人だけど、ここまで来るのは結構大変だったんだよ。
…って苦労話しても仕方ないよねぇ。



とりあえず、"恋文屋"が何かって分かってもらえたかな?
開業場所はだれも知らない秘密の場所。
でも、せっかくだから、少しだけ教えてあげる。
寂れた、廃墟みたいなお寺があったら、怖がらずに覗いて見て。
運が良かったら、"恋文屋"の取次ぎが待機してるから。

前金弐両、後金弐両、成功報酬は壱両上乗せで、あなたの恋文も必ず届けてあげる。
ん?ちょっと高い?
そりゃ、こっちだって命がけだしねぇ。
でも、まぁこれも何かの縁だし、『触れ合う袖も多少の縁』ってことわざもあるし。
もしアタシが取次ぎ役してる時に依頼してくれたら、ちょこっとだけオマケしてあげる。








恋文屋です。
幸村と政宗の恋の架け橋(?)くのいち。
なんでハットリさんとか、ネネちゃんとか、小太が協力しているのかは、
いずれ。スピンオフ的に。