好きな人と一つ屋根の下、という状況は時として非常に困るものだ、と豪は思った。 忍耐 目の前に好きな人が居ます。 この暑さのせいか、ランニングにハーフパンツという軽装で、ソファに横になって転寝する姿。 惜しげもなくあらわにされている鎖骨、 ランニングから覗く、上下する胸、 すらりと伸びた手足。 家人は留守で、目の前には無防備な想い人。 一ヶ月ほど前、気持ちは確かめあいました。 ダメもとで告白してみれば、思いのほかあっさりお付き合いのOKをもらえて、 正直肩透かしを食ったような感じで。 自分達の間には、男同士という山の他に血の繋がった実の兄弟である、という山も存在しましたが、 その山を一緒に越えてくれると言ってくれたので、天にも昇る気持ちでした。 お堅い常識人、だとばかり思っていた実の兄が自分の気持ちに応えてくれたのが嬉しく 暫くははしゃぎまくっていたのですが。。。 が、ここ一番の意気地が足りないせいか、気持ちを確かめあってから一ヶ月。 手に触れることすらできていないのです。 だいたい、手を伸ばせば届く位置に相手は居ます。 何度も勇気を振り絞って、手を伸ばして抱きしめようと思いましたが 伸ばした手(または伸ばそうとした手)は虚空をさまよって自分の元に戻ってきてしまいます。 いつも強気に本気、豪気な自分はどこへ行ってしまったのか、毎夜自問自答する日々。 今も、目の前に横たわる麗しい想い人の姿をただ眺めるだけで、 手を伸ばして触れよう、とかキスしたい、などの願望はあるものの 実行できないままじりじりと汗が伝う中、10分ほど凝視するだけにとどまり。 鼓動は高鳴り、何度生唾を飲み込んだことか。 顎から伝う汗は床に数滴のシミをつくり、己の葛藤を物語っているようです。 気持ちを確かめあったのに、手が出せないのは 決して男同士だったり兄弟だったり…を気にしての事ではなく。 もし、抱きしめたりキスしたりといった行為をして、この想い人が 『やっぱりダメかも…ごめん…』と言い出さないか、と心配なため。 悔しいことに、想い人は人を幸福の絶頂から絶望の淵へ叩き込む事などなんとも思ってない いっそ清々しいくらいの冷血漢だったりする一面も持っているため、 迂闊に手が出せません。 暑さのためか、うっすらと上気する頬、 じんわりと浮かぶ汗が視覚的に性的欲求を高めていきます。 いっそ視姦できるほど見つめていると、ころりと寝返りを打ってしまいました。 豪は烈の顔が良く見えるようにソファの前へ移動し、しゃがみこんでしまいました。 髪に触れようとして手を伸ばし、やっぱり手を戻し…を数回繰り返し、 腕を組んで深く深くため息をつきました。 「せめて…起きてるときだよなぁ……」 起こさないように小声でうなると、不機嫌そうな紅い瞳とぶつかりました。 「お前…うっざいよ……」 「烈兄貴!…起きてたの?」 若干お怒りモードな烈に、豪は飛びのきました。 「5分も10分も側にじーーっと立たれて起きないはずないだろ…」 「ごめん…その……えっと…」 しどろもどろになる豪に今度は烈が深くため息。 「お前って、本当にどうしようもないところでヘタレなんだよな…」 言葉に詰まる豪のTシャツを掴んで引き寄せると、烈はそのまま豪の唇に自分の唇を重ねました。 ほんの数秒触れ合った唇に豪がびっくりしていると、烈はこの上なく綺麗に微笑み、 「もう、昼寝の邪魔するなよ?」 一言だけ告げてソファに身を預けました。 呆然としたままの豪を残し、烈はさっさと夢の住人になってしまいましたが、 その後眠る烈を見て下半身に熱を感じた豪が、烈が起きるまでの小一時間ほど その場で悶々としていた事は、本人しか知りません。 恋は忍耐。 つくづく実感した豪。 |
リハビリ中 短いですが、たまにはヘタレ豪で。 一回タガが外れると、暴走するくらいが丁度良いかも。 とか勝手に妄想。 ほら、最近とっても暑いので、頭がゆだっちゃってるんです。雲。 (なんて酷い言い訳…) |