兄貴が言ってることも分かるけど。
俺にはもう何が正しいのか分からない。
結局兄貴は何が大切なんだろう。
俺との関係、世間体、それとも別の誰か?
優しいのは知っていたけどその優しさを少しは俺にもかけて欲しい。
烈兄貴にとって俺は何番目?





はじめてものがたり 疑問





烈の部屋。
ぐずっていた豪を部屋で待たせると、烈はホットココアを持って現れた。
「ほら。」
ベッドに座っていた豪はマグカップを受け取ってその温かさを指先・手のひらから感じ取ろうと
そっと両手で包み込んだ。
「立花が、烈兄貴のとこに何を言いにいったんだよ?」
ふぅっと息を吹きかけると水面に波状の模様ができる。
烈も同じようにふぅふぅと息を吹きかけて熱を逃がすと、一口こくり、と嚥下した。
「始めはさ…宣戦布告だったんだけど。」
「宣戦布告?」
「"負けませんから"って言われた。」
苦笑して豪を見やる。
お前ってやっぱり結構人気あるんだな、と呟いてココアをもう一口。
甘い、けれどその後にほろ苦さが伝わってくる。
牛乳を温めて作ったんだから、もう少し甘くても良いんじゃないか、と思う。
まぁ豪にとってはこれくらいが丁度良いはずだ。
「で、その後に一ヶ月だけお前を貸してくれって言われた。」
「…俺はモノ扱いかよ…」
豪はすっかり不貞腐れてしまった。
マグカップの中のココアを飲み干すほどの勢いで喉に流し込んだが、
やっぱり熱くて三分の一ほど残ってしまった。
けれどしっかり舌は火傷してしまったのだから、なんだか割りに合わない。
今日は朝からずっともやもややイライラした気持ちがあって虫の居所が悪い。
その上火傷までしてしまって苛立ちもピークだ。
なんとか気持ちを落ち着かせようとして、ふと良いことを思いついた。
「…兄貴…火傷した…」
ぺろっと舌を見せて、傍らに座る烈を抱き寄せる。
「舐めて?」
そのまま顔を寄せると烈の手の平によってやんわり避けられる。
「話の続きを聞け。」
「ケチ。じゃあ話が終わったら舐めてよ。」
「…豪…」
軽く烈に睨まれて、豪は抱き寄せていた烈を解放した。
ちぇっと舌打ちして豪はベッドに逆戻り。

「カンナちゃんさ、社長令嬢っていうのは知ってるよな?」
「ん?そういえばそんな事聞いた気がするな…」
マグカップをローテーブルの上において、豪はごろりとベッドに横になった。
その胸の中にはさっきから何かもやもやしたものかかっている。

烈が怒っていないことは、豪にとって喜ばしいことだった。
けれど、立花カンナとの付き合いについてはやはり気にしているようだし、
豪を許してくれている割りにどこか一線を引こうとしている気がする。
確かに、現在豪は立花カンナと付き合っている訳だし、
烈とこのように接すること自体、どちらにとっても不義理だと言えるのかも知れないが。

「なんか、親の決めた許婚っていうのがあるらしくて。
会社の経営とか、今後の展開とか、そういったシガラミが強いらしくてどうしても断れないそうだ。」
まだ16歳なのに辛いよな、と烈は小さく息をついた。
「…それとこれとどういう関係が?」
「お前も鈍いな。近々、その許婚と顔合わせをして二ヵ月後には結納があるらしい。」
「…わかんねー。どんな関係があるの?」
ココアを飲みながら話していた烈が豪を睨みつける。
「会った事も無い許婚と結婚する前に、ホントに好きなお前と付き合っておきたかったみたいだ。」
「それで俺を脅したって訳かよ…」
上半身を起こしてベッドの上に胡坐をかく。
「そう言うなよ…。カンナちゃんも若いのに大変なんだから、少しくらい好意的に見てやれないのか?」
「烈兄貴。俺が好きなのは兄貴なの。
立花がどう思っていようが俺には関係ない。兄貴は良いのかよ?俺が立花と付き合ってても。」
「…現にもう付き合ってるじゃないか」
空になったマグカップを持って部屋を出ようとしたところで豪に腕を引かれた。
中身は入っていなかったから、液体をこぼすことはなかったけれど。
バランスを崩してベッドの上の豪に背後から拘束される形となった。
「豪!危ないだろ」
「兄貴にとって大切なのは俺?それとも立花?どっち?」
耳元で囁かれて烈の動きが止まる。
「どっちって…」
「立花の方が大切だから、黙認してるわけ?
兄貴が怒ってないっていうのは俺にとっては嬉しいけど…。なんかすげー複雑。
俺は立花と別れてくれって言って欲しかった。」
「…別れてくれって言ったって、別れられないんだろ?」
「それは…そうかも…」
「仕方ないんだろ。それならせめて、カンナちゃんの気が済むようにしてあげたら良いじゃないか。」
話は終わった、と豪から逃れようとするが思いのほか強い力に体が動かない。
「…仕方ないかも知れないけど…俺はもう兄貴じゃなきゃダメなのに…」
そう呟いて豪の目の前にある烈の白いうなじに唇を寄せた。
「っ…豪?!」
口付けられたあと、キツク吸われてちりっとした傷みが走る。
「立花ばっかじゃなくて、俺にも優しくしてよ。たまには俺のワガママ聞いてよ。」
片腕で烈をしっかりと抱きしめ、もう片手で烈の手からマグカップを奪う。
二つともローテーブルの上においてしまうと、豪は体を入れ替えて烈をベッドに押し倒した。
「豪…何を…?」
烈の声が震えているのは気のせいではないだろう。
「この状況でもまだわかんない?」
右手を取ってその指先に口付ける。
まだ、烈から抵抗は感じられない。豪の本気度合いを量りかねているのだろう。
烈の右手の人差し指を口に含む。
舌を絡めて、男にしては華奢な指を舐めあげる。
唾液を絡めて吸い上げると、次は中指、薬指と同じように繰り返す。
「…ご…ごぉ…」
烈の声はさらに震え、何かに耐えるように目をつむってしまった。
体には力が篭り、拒絶する動きに変わる。
「やめろ…ちゃんとカンナちゃんとの付き合いが終わるまでは…こういうことは…」
「関係ないよ、そんなの。」
顔をそむける烈の頬を固定し、自らの視線に合わせる。
「そういえば、俺火傷したんだった。兄貴舐めて治してよ。」
ぺろっと舌をだし、そのまま烈の唇を舐める。
しっかりと閉ざされた唇は開くことはなかったが、舐めた舌をそのまま唇の間に差し入れる。
頬をきつめに押さえて歯列の間に指をあてる。
流石に傷みが走ったのか、烈の眉が寄る。
「口、あけてよ。」
頑なに拒む烈に焦れた豪が少々乱暴に頬を押える指に力をこめた。
「っ!!」
より一層強くなる痛みにうっすらと口が開いた。
そこを逃さず豪は烈の口内に舌を侵入させる。
豪の横暴な行為に足も腕もばたつかせて抵抗するが、なかなか拘束は緩まない。

火傷した、と言った割には丹念に烈の舌に舌を絡める。
抱きしめられるのも、抱きしめるのも、キスするのも、舌を絡めるのも
まだまだ数えるほどしか共有してない。
しかも豪は現在他の女性と付き合っている。
そんななか、こういった行為に及ぶことに烈は抵抗を覚える。
豪が何をネタに脅されたのかまでは知らない。
でもきっと自分が絡んでいるのだろうと思う。
そうでなければ、脅しなどに屈せず豪はきっぱり断るだろうから。
だから現在の状況は自分のせいもあるのだと、烈はそう考えていた。

一ヶ月、我慢しようと思った。
立花カンナに対して同情したとかそういうことも含め、烈は烈なりに落とし前とつけようと思っていたのに。
どうやらそれが豪にとっては気に入らないらしい。
『別れてくれ』と言ってほしいと言う。
烈だってそう言えたらどれほど楽か、と思う。
豪がどのように思っていようが、烈だって豪が好きだし豪でなければダメなのだ。
それが一ヶ月限定とはいえ他の女性と付き合うなんて、考えるとイライラしてくる。
手を繋いだり、キスしたり、付き合っているならそういうことだってあるはずだ。
本当はそんな事考えたくも無い。
烈だって豪と付き合い始めたばかりで、ようやく自然とキスしたりできるようになってきたところなのに。
狂いそうになるのは烈だって同じ。

けれど、一度カンナとの仲を認めたからには一ヶ月我慢しようと決めたのだ。
それを覆せと言う豪に少々腹立たしさも覚える。
そして、烈の気持ちなどお構いなしにこういったスキンシップを求めてくる無神経さにも。

頭では分かっているが気持ちがついていかない。
カンナを裏切っているようにも思えるから。

「…よ…せ!」
キスの合間に拒否の言葉を繋げ、両手と両足で目一杯豪を押し返す。
その拒絶が気に入らないのだろう。
豪の機嫌はだんだん悪くなっていく。
そして烈を扱う腕にも力が入り、行為をやめるどころかどんどんエスカレートしていった。
烈の頭のどこかでサイレンがなる。
これ以上はキケンだと。本能的に豪に対して恐怖を感じている。

キスは噛み付くような激しいものに変わり、烈を押さえつける手は衣服を分け入って素肌に触れた。
肌理を確かめるように、淫靡に動く指先。
行為をやめない豪に恐怖感だけが募っていく。
抵抗はほとんど意味がなく逆に豪を煽るようで、かといってここで脱力してしまうのは恐い。
どうしようも出来なくなって烈は軽い混乱状態に陥った。
「やだ…!豪…やめろっ!!…や…ぁ…」
押し返す腕は片手で拘束され、キスは唇からうなじ、鎖骨へと移動していく。
パーカーをたくし上げられ、わき腹からへそ、胸へと手が這ってゆく。
烈の背に、恐怖以外のゾクゾクした何かが走っていく。
こんな状況でこういった形で豪に触れられたくない。
ましてやこのまま体を繋ぐなど考えたくもなかった。

「い…やだ…」
ついに涙が溢れ、烈は泣き出してしまった。
流石に豪も我に返り手を止めて、躊躇いながらその涙を指で掬った。
「…わるかったよ…もう、しない。」
豪も落ち着いたのか、烈の服の乱れを正して体を離した。
ぼろぼろと止まらない涙に烈自身が困っていると、豪がマグカップを持って立ち上がった。
「ごめん。俺ちょっと頭冷やしてくるわ。」
本当はついててあげたいけど、いまキツイ。と残して部屋を出る。
部屋のドアが開いて豪が出て行っても、烈はしばらくベッドの上で身動きが取れなかった。









豪の暴走特急出発進行。(違)

そろそろオリキャラも終わりにしたいところですが、なかなか〆られません。
もう少しお付き合いいただければ、と思います。。。
ラブラブを目指しているはずなのに、なぜこうも豪は烈を押し倒したいのかww
(雲がそういう豪烈も好物だからですww)

それにしても…なんだか豪がどんどん女々しい奴になってゆく…。(;-;)