初めて付き合った子はショートカットの活発な子だった。 次に付き合った子はロングヘアのお嬢様系だった。 三番目に付き合った子は、確か手作りマフラーをもらった気がする。 その後は…印象にない。 はじめてものがたり プロローグ 「豪…その…僕と付き合ってくれないか…?」 心密かに思いを寄せていた人からそんな事を言われ、一瞬意識が飛んだ。 「烈兄貴…?」 床に寝転んでマンガを読んでいた俺は、相当きょとんとした顔をしていたんだと思う。 珍しくオレの部屋に来てドアの前にたたずむ兄貴をただ呆然と見つめ返していただけだったオレだけど…。 ちょっと震えながらうつむき加減で、顔を真っ赤にもじもじする烈兄貴は凶悪にかわいかった。 「いや、急にこんなこと言ってお前だって困るよな…。だけど、僕…その…」 「烈兄貴…自分が言ってることの意味、分かってる…?」 オレの言葉にビクりと肩を震わせる兄貴。 「わ…分かってるよ!僕が言っているのは…」 「兄貴オレにキスできるの?」 床から起き上がって、兄貴の手を取る。 烈兄貴がどれだけの決意でオレの部屋まで来て告白してるか分かってて、 オレはワザと意地悪してしまった…。 目の前にいる兄貴がすごくかわいくてついつい苛めたくなって、言葉尻にかぶせて追い詰めた。 「それは……」 さらに顔を赤くする兄貴に重ねて問う。 「兄貴が言ってること、オレが考えてる通りの事ならできるよな?」 「できる…けど…お前はどうなんだよ。僕から告白されたり、キスされたりするの… 気持ち悪くないのか?男同士で兄弟なのに…」 「全然大丈夫。オレだって兄貴の事がずっと好きだったから。」 「えっ…?」 「兄貴知らなかった?オレずっと兄貴が好きだったよ」 「…えぇ…?!」 「でも兄貴頭固いじゃん。だから、オレ正直諦めてた…。」 「…おまえ…いつから?」 真っ赤で恥らっていた顔がみるみるうちに正気に戻っていく。 「ずっと。中学上がった頃から。」 「だってお前…とっかえひっかえ女の子と付き合ってたじゃないか」 「一番が手に入らないなら誰でも同じだから…。でも、烈兄貴オレと付き合いたいんでしょ?」 目の前で硬直してしまった烈兄貴を引き寄せて抱きしめた。 「烈兄貴、オレと付き合ってくれるんでしょ?」 もう一度今度は耳元で囁いて、クセの無い髪の毛に指を差し入れた。 「なんだか…お前ズルイよな…」 ため息交じりの兄貴の声。 「ズルくてもなんでも良いや…。烈兄貴、キスしてよ。」 鼻を紅い髪の毛に埋めて、兄貴の匂いをかぐ。安心する香り。 自分でも信じられないほど甘えた声。今まで兄弟としてやってきたのがありえないくらい。 「お前急に…そんな態度取るのか…?」 「だってオレ今すげー嬉しいもん。信じられない。烈兄貴が…兄貴の方から言ってきてくれるなんて…」 おずおずとオレの背に回される兄貴の腕。 なんだかすごく気持ちが昂ぶる。 「ちゃんと、『好き』って言ってオレにキスしてよ。」 「豪…好きだ。僕と付き合ってくれないか?」 背に回されていた手が、オレの頬を包んで少し潤んだ兄貴の紅い瞳がゆっくりと閉じられる。 そのあまりにもオイシイ光景にめまいが止まらない。 けれど…。 「……あのー…兄貴…?一体何時まで待たせる気?」 一向にキスしてくれない烈兄貴に痺れを切らせてしまた俺。 「う…五月蝿いな…心の準備が…それにいざとなると何か…」 頬を紅く染めてごにょごにょ言い出した兄貴。 とりあえずもう一回、と仕切りなおしてじりじり近づいてくる兄貴のかわいさに我慢ができず、 逆に兄貴の頬を固定してキスをしてしまった。 「ちょっ…ごぉ…」 びっくりしたのか、のけぞり気味の兄貴の腰を捕まえて引き寄せた。 「烈兄貴の方からオレのところに飛び込んできたんだから、絶対放してやらねーから」 「…望むところだよ」 ふんわりと幸せそうに微笑むその顔がとても綺麗で、オレはもう一度キスした。 人生最後の恋人は、兄貴に決まりました。 |
いっつも無理矢理系が多いので、今回のコンセプトは和☆ 豪と烈のはじめてだらけ物語、ということで。 雲にしては珍しく、烈の方が良く動く…かもしれません。 |