「なー、兄貴。」 「どうした?」 「もしも、だけど。俺達兄弟じゃなかったらどんな関係だったと思う?」 「…はぁ?」 even if 「お前、また唐突にどうしたんだよ?」 烈の部屋。 相変わらず豪はこの部屋に入り浸りだ。 小中学と卒業し今年は豪も烈と同じ高校に入った。 正直、高校まで兄弟同じ、というのはどうかと思ったが、 烈のレベルに追いつくべく一生懸命勉強した結果だ。 兄としては喜んでやらねばなるまい、と思っている。 「だからさー、もしも、の話。」 ごろん、と烈のベッドに横になり読んでいたマンガ雑誌のグラビアページを開く。 お気に入りのマンガは読んでしまったので手持ち無沙汰だ。 おっ、この子かわいいなー、とか腰のラインが良い、とか年相応の反応を示している。 「兄弟じゃなかたら…そうだなぁ。姉妹とか?」 「姉妹って…今とかわらねーじゃん。」 「でもお前との関係って迷惑かける側とかけられる側ってカンジだろ?」 「なんだよそのカンケー。あ、でももし姉貴になったら、怒るときパーじゃなくてグーになりそうだよな…。」 机に向かって明日の予習をしていた烈は辞書から目を離さずに淡々と語った。 「ありうるかもな。お前があんまり馬鹿な事ばっかりするなら。」 えー。と非難の声をあげる豪などお構いなしだ。 「もうちょっと他にねーのかよ?」 グラビアから兄の背中に視線を投げる。 背を向けたままの相手がちょっとだけ憎らしい。 「そういうお前は何だと思うんだよ?」 勉強に集中できないためか、諦めて豪の方へ椅子を反転させる烈。 この話題に付き合えば、暫くは豪が静かになるのでは、と淡い期待を抱いての事だ。 「俺?そうだなぁ…。親友ってカンジじゃないし…ライバルってとこか?」 「ライバルか…」 「そ。ライバル。ぴったりじゃねぇ?」 ふぅん、と半眼になった烈に豪は嫌な予感がした。 「もちろん、勉強のってワケじゃなさそーだな。」 「なっ…俺もやれば出来るんだぞ!やらないだけで!」 「やってみろよ。たまには。」 「もうガッコ入るのにやりつくした。」 「…おっしゃるとおりだな。」 なんとかごまかした豪は逸れた会話の流れを嫌な方向から自分の流れに持ってくることに成功する。 「でも、今でもレーサーとしてはライバルみたいなもんだから、 あんまりかわらねーか。」 「じゃあ何だと思うんだ?」 「んー…」 考える仕草をして、ベッドから起き上がると、椅子に座っている烈を抱きしめ耳元で囁いた。 「夫婦?」 ゾクリ、と駆け抜ける何かに烈の体が震える。 「…お前…」 「兄貴顔赤くなってる。かぁわいい〜」 鼻の下を伸ばしながらぎゅうぎゅう抱きついてくる豪に、烈は拳骨を見舞う。 本気の拳骨でないため、ますます気分を良くして妄想を膨らませる。 「俺、兄貴似の女の子と俺に似た男の子が欲しいな♪」 「何の話だよ…」 「俺と兄貴の子どもの話。あ、夫婦だったら『兄貴』じゃないのか。」 一人合点し、俺と烈の子供、と言直すあたり余程子供が欲しいのだろうか。 深くため息をつき、今度は豪の頭をぽんぽんと撫でる。 「で?どうしんだ急に。そんな話して。」 話を一番最初まで戻された豪は急にしおらしくなった。 「いや…偶然気づいたんだけど今日って兄貴の誕生日から俺の誕生日まで、 丁度半分なんだなって思って。」 「?…それがどうしたんだよ?」 「俺達、2歳も年の差があるんだなぁって。まぁ年の差なんかどうでもいいんだけど。 兄貴は一生俺の兄貴なんだなって思ったらなんか…さ。」 言いながらさらに擦り寄ってくる豪に、烈は首を傾けて豪のおでこに自分の後頭部を軽くぶつけた。 「いてっ」 「馬鹿豪ー。姉妹だろうが、ライバルだろうが、夫婦だろうが変わらないよ。 俺にとってはお前が一番だから…」 「兄貴…」 豪が烈に想いを告げ、烈がその想いを受け入れてから暫くたつが、 烈からそんな甘い言葉をもらったことがない豪は軽く感動してしまった。 告白の返事も痺れを切らした豪が烈に返事を催促し、煮え切らない態度を説得したほどだったのに。 まさかこんな形で愛の告白をされるとは。 「すっげー嬉しい…俺生きてるうちにそんな事言ってもらえるなんて思ってなかった。」 「こら。どれだけ酷い人なんだ、俺は。」 苦笑する烈に豪はますます腕に力を入れてしまう。 「兄貴大好き。俺今すっげー幸せかも…ねぇ、もう1回言って欲しいな…」 弟の甘えた仕草に滅法弱い兄は、そんなに喜んでくれるなら、とやっぱり甘やかしてしまう。 「お前が弟じゃなくても、俺にとっては一番だよ。その…す…すき…だから…」 真っ赤になって語尾は小さくなってしまっていたが、 くっついていた豪の耳には良く聞こえた。 「へへっ俺も!兄貴が俺の兄貴じゃなくても、兄貴が一番好きだぜ!!」 恥ずかしさのあまりうつむいてしまった烈の顎を上向かせ、 豪は薄く開かれた唇にキスをした。 |
星馬兄弟誕生日真ん中の日に滑り込み。 某所でお祭りをされていて、実は参加したかったのに気づいたらもう6月過ぎていたという。 唯でさえ下手っぴなのに、30分くらいで無理やり書きあげた品。 多分、後でこっそり手直しするんだろうなぁと思いつつ。 うちの烈はどうにも受け側なので、たまには烈から言ってみたり。 やはり豪の方が動かしやすい。うむ。 |